陽水、仙台で「最後のニュース」 来月15日福島でも

[ 2012年5月16日 06:00 ]

全国ツアー仙台公演で「最後のニュース」などを披露した井上陽水

 井上陽水(63)が15日、全国ツアーの東北公演を仙台サンプラザホール(仙台市宮城野区)で行った。東日本大震災の影響で昨年3月24日に予定していた仙台公演を中止しており、初の被災地入り。震災後、その歌詞の内容があらためて注目された名曲「最後のニュース」を披露。「このまま歌い続けていいのか」と歌手人生を再考させられた陽水が、歌で被災者にメッセージを届けた。

 おなじみのサングラス姿でステージに登場した陽水。力強く「ガンバレ」と歌う「東へ西へ」でスタート。「昨年の仙台公演が震災でなくなり、1年と少したって歌いに来られました。ご苦労さまでした。いろんなことがありましたが、きょうは少し忘れて、少し思い出して、楽しんでいただきたいと思います」。PUFFY「アジアの純真」など明るい曲も織り交ぜ、約20曲を披露した。

 震災当日、陽水は全国ツアーの福岡公演のステージにいた。通常通り開催したものの、被災地の惨状に言葉を失った。その後に予定していた仙台公演など3公演を中止。5月の東京公演以降、昨年は二度とステージに立つことはなかった。

 「しばらくは歌う気になれなかった」。陽水は周囲にこう漏らしていた。だが昨年末に「自分が歌うことで少しでもつらいことが忘れられる時間になるならば」と、東北での公演を含めた全国ツアーの開催を決断。仙台のほか、16日に岩手、来月15日には福島で公演する。

 ステージ中盤。「多くの曲は“あなたはステキだ”とか歌っているんですけど、少し変わった曲もあるんですよ」と紹介した上で「最後のニュース」(89年)を歌った。

 ♪原子力と水と石油達の為(ため)に 私達は何をしてあげられるの―。

 故筑紫哲也さんから頼まれ、TBS「NEWS23」のエンディングテーマとして制作。戦争、薬物、捕鯨など地球上のさまざまな問題に触れた中、エネルギー問題にも切り込んだ作品。周囲には「今歌うことは適切ではない気もする」と漏らしていたが、あえて被災地で歌った。今の思いがにじんだ。

 今月に入り、北海道電力泊原発3号機が停止して全国50基の原発全てが止まった。「原子力=悪」というイメージができている中、これまで多くの恩恵を受けてきたわれわれは「水や原子力に何をしてあげられるのか」という発想。ステージで多くは語らなかったが、歌で雄弁なメッセージを送っていた。

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2012年5月16日のニュース