渡辺謙 日本芸能人初!ダボス会議で「絆」スピーチ

[ 2012年1月26日 06:00 ]

ダボス会議の会合でのスピーチ後、記者会見する渡辺謙

 スイスのシンクタンク、世界経済フォーラム(WEF)の42回目の年次総会(ダボス会議)が25日、同国東部のダボスで開幕した。俳優の渡辺謙(52)が日本の芸能人として初参加し、主要議題の一つである東日本大震災について英語でスピーチ。世界中からの支援に感謝するとともに、「行き場を失った人々に残ったのは“絆”という文化だった」と強調した。

 「多くの幸を恵んでくれた海は、多くの命をのみ込み、生活の全てを流し去ってしまいました。そこに何が残っていたか。何も持たない人間でした。しかしそこには人が人を救い、支え、寄り添う行為がありました。それは私たちが持っていた“絆”という文化だったのです」

 ジャケット姿の渡辺は力強い口調。「絆は、全てが流れ去ってしまった荒野に残された光でした。今日本は、少しずつ震災や津波の傷を癒やし、その絆を頼りに前進しようともがいています」と聴衆に語りかけた。また、東北出身の詩人、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を英語で朗読。大きな拍手を浴びた。

 共同電によると、被災者を励ますために国内外の著名人から寄せられたメッセージを配信する動画サイト「kizuna311」を共同で立ち上げるなどの活動が評価され、会議参加に推薦された。95年の阪神大震災時は急性骨髄性白血病のため十分な支援活動ができなかったため、東日本大震災の支援には人一倍強い思いで臨んでいる。すでに約40カ所の被災地を訪問。ダボス会議に参加が決定した際には「日本の現状を世界にプレゼンする絶好の場。インターナショナルなスピーチで、今の東北や日本の姿を世界に広めたい」と意気込んでいた。

 福島第1原発事故にも言及。「原子力という、人間が最後までコントロールできない物質に頼って生きていく恐怖を味わった今、再生可能エネルギーに大きくかじを切らなければ、子供たちに未来を手渡すことはできないと感じています」と訴えた。

 スピーチ後には記者会見。「被災地では人間として何をするべきかという観点で活動を始めた」と説明。「被災地の、日本のありさまを世界に発信したかった」と、ダボス会議参加の目的が果たせ、晴れやかな表情だった。

 ▽ダボス会議 世界経済フォーラムの会員企業1000社のCEOのほか、選出された政治家、学会やNGOの代表者、宗教指導者らが一堂に会し、世界のあらゆる重要議題について討議する場。招待者のみが参加できる。過去には、エイズ撲滅やアフリカ支援に積極的なアイルランドのロックバンド「U2」のボーカリスト、ボノ(51)が参加した。
 29日までの期間中、ギリシャやイタリアの財政危機問題や、イラン、北朝鮮の核問題など約250の会合が予定され、約40カ国の首脳を含め政財界、文化人ら2600人以上が議論。26日には菅直人前首相が震災時の対応などについて報告する。

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2012年1月26日のニュース