本木雅弘 6年ぶり民放ドラマ主演で“密約追う”

[ 2011年9月1日 06:00 ]

 1972年の沖縄返還の日米密約をめぐる外務省漏えい事件を基にした山崎豊子氏(86)の小説がドラマ化される。来年1月にスタートするTBS日曜劇場「運命の人」(日曜後9・00)で、本木雅弘(45)が密約を追及した新聞社のエース記者を演じる。「視聴者の皆さんにとっても運命の一作になるよう努力したい」と意気込んでいる。

 描かれるのは、沖縄返還をめぐる日本政府と米国の密約を追及するために動いた記者が、入手先の外務省女性事務官とともに国家公務員法違反容疑で逮捕された事件。起訴状に「ひそかに情を通じて…」と書かれ、スキャンダルにすり替えられ、密約追及が不発に終わった実際の出来事をモデルにしている。

 原作は09年に発表された山崎氏の同題の最新作。累計130万部のヒットで映像化は初。

 本木は民放の連続ドラマに6年ぶりの主演。スクープを連発するエースであるが、その一方、不遜な態度も目立つオレ様記者役。瀬戸口克陽プロデューサーは「厚顔不遜な部分も、繊細な部分も演じられて品格がある人は本木さんしかいない。山崎さんも同じ思いだった」と出演を依頼。翌日に快諾の返事が来たという。

 仕事に熱中する夫を支え、事件後も家庭を守ろうとする妻役は松たか子(34)。松も連続ドラマは6年ぶりの出演となる。外務省女性事務官役は真木よう子(28)が演じる。

 2年前に瀬戸口プロデューサーが山崎氏に長文の手紙を書き、複数の映像化の依頼からドラマ化が決まったが、放送時期は「問題提起したい」と沖縄返還40周年の来年に決定。「登場人物がそれぞれの立場で理想と欲望に正面から向き合って生きていく姿は、(視聴者の)励みやヒントになる」と期待している。

 本木は三味線と長唄に親しんでいる役どころで、「自然に見せたい」と自宅でも練習に励んでいる。記者役について「傲慢(ごうまん)な知性と野性を持つ危うい人物で自分なりのアクを出せるかが問題。年相応の存在感がにじませられれば」と話し、「松さんの気高さ、真木さんの妖しさに打たれて、数カ月間存分に漂流したい」と今月中旬からの撮影を楽しみにしている。

 ▼山崎豊子氏 1971年当初、沖縄返還交渉を取材していた1人の敏腕政治記者が、日米間の密約文書の存在を知り、記事にし始めた時、国家権力の逆鱗(げきりん)にふれてしまう。その政治記者の不屈の精神と強い生きざまを、新聞社と沖縄を絡めて描いた。主人公役の新聞記者には、ぜひ、本木雅弘さんをとお願いした。強靭(きょうじん)さと悲劇性を併せ演じられる俳優さんだと、お見受けしたからだ。今は、初めての映像化作品となる「運命の人」が、視聴者の皆さんに共感され、感動していただけるドラマになることを、切に願っている。
 
 ◆外務省機密漏えい事件 沖縄返還協定が調印された71年6月、新聞社記者が沖縄の米軍用地の原状回復補償費400万ドルを日本側が肩代わりするとの密約に絡む外務省機密公電のコピーを入手し、密約を示唆する記事を掲載。72年4月、記者と事務官は国家公務員法違反容疑で逮捕された。94年に米国立公文書館で密約を示す文書の公開が始まり、その後、返還交渉を担当した元外務省局長が密約を認める立場に転じた。09年に記者らは密約文書の開示を求め東京地裁に提訴し、10年4月に原告側全面勝訴の判決。控訴審の判決は9月29日。山崎氏の「運命の人」は09年、第63回毎日出版文化賞特別賞を受賞。

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2011年9月1日のニュース