[ 2010年6月13日 06:00 ]

ハーディングとスウェーデン放送交響楽団 (C)Micke Gronberg/SR
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 シャープな感性と柔軟性に富んだ音楽作りで作品に内包されている“知られざる魅力”に迫る手腕は卓越したもの。そのアプローチは大胆かつ野心的で、演奏が平凡に終わってしまうことは皆無といってもいいだろう。

 スウェーデン放送響との来日公演のプログラムは2種類。ひとつは得意のモーツァルトのみの公演(6月15日、東京オペラシティ・コンサートホール)で交響曲第40番ト短調とレクイエム。合唱は精妙なアンサンブルで世界最高のコーラスのひとつと評価されるスウェーデン放送合唱団。そして、もうひとつは本稿のテーマであるマーラーの交響曲第1番を取り上げる公演(6月16日、同所)だ。マーラーの前にはモーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」とリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」という意匠を凝らした組み立てになっていることもいかにも才人ハーディングらしいところ。彼のことだから、もしかすると前半のテーマである稀代のプレイボーイ、ドン・ファンとメーンのマーラーの第1番に何らかのつながりを持たせるような解釈がなされるのかもしれない。一見荒唐無稽にも思えることでもハーディングならやりかねないし、実際やれば、それなりの説得力を持って聴衆に訴えかけてくることも過去の演奏で実証済みだ。いずれにしても、この作品の持つ全く別の表情が明らかにされる可能性は高く、マーラー・ファンには必聴の公演といえよう。

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2010年6月13日のニュース