[ 2010年5月29日 06:00 ]

NHK交響楽団も長年、共同作業を続けてきた巨匠に対する思い入れにあふれた熱演を披露した

さらなる期待を胸に翌週、ブロムシュテットが得意とするベートーヴェンのみのプログラムを聴きに行きました。独奏はウィーンなどで活躍するルドルフ・ブフビンダー。大きな手で鍵盤に柔らかくタッチするのですが、実にしなやかで美しくまろやかな音色を生み出すのです。それでいながら弾けるようなリズムで1つ1つの音が生命感に溢れている。ピアノはメロディーも弾けるし、打楽器にもなる。知らなかったピアノの潜在能力をブフビンダーが教えてくれました。

この日、ブフビンダーもブロムシュテッドも譜面を置いていませんでした。2人の距離は近く、まるで会話を楽しむかのような演奏。協奏曲というと今まではベテランの指揮者と若手ソリストの組み合わせで聴く機会が多く、このようにオーケストラと互角に、いやそれ以上に渡り合い、場合によってはリードまでしてしまうタイプのソリストというのは、初体験に近いものがありました。コンシェルジェにこのような感想を述べると、ブフビンダーはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮振りするほど、自らの確固たる音楽観を持ったピアニストだと教えてくれました。「道理で」というわけです。
この日は前半に力が入り過ぎたのか、後半の第3交響曲は少しばかりテンションが下がったような印象を受けました。もちろん全体としては、高水準の演奏ではあるのは事実なのですが、前週のマーラーや前半の「皇帝」の演奏があまりにも素晴らしかったため、期待が必要以上に膨らみ過ぎたのかもしれません。コンシェルジェも意外に感じたようで「とりわけ第2、3楽章はそうした傾向にあったように見受けられた。このコンビのベートーヴェンは過去に何度も聴いているが、ストイックなこの指揮者のキャラクターが反映された峻厳な雰囲気に満ちた演奏が多かった。この日の“英雄”は、厳しさというよりもどこか優しさすら感じさせるほどの穏やかなもので、ブロムシュテットの年齢による変化が何らかの影響を及ぼしている可能性がある。とはいえ、生演奏は一期一会。同じ組み合わせでも日によって出来不出来は当然ある」そうです。

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2010年5月29日のニュース