[ 2010年3月6日 06:00 ]

ダン・エッティンガー

 確かにウォーナーの演出は世界トップ・クラスの優れたものでしたが、バイロイト音楽祭などで活躍している実力派歌手陣も、これに負けず劣らずの本領を発揮してくれました。

まずは03年のプレミエに続いてジークフリートを演じたクリスティアン・フランツとブリュンヒルデ役のイレーネ・テオリンについて、感想を述べたいと思います。
ブリュンヒルデが長い眠りから目覚めて発する第一声「Hiel dir Sonnne! (太陽にわが祝福を!)」でのテオリンの突き上げるような強い声は、この場面で幾度か鳴るホルンと木管楽器による印象的な和音よりも、ずっと力強いものでした。フランツは、1幕ではボリュームを抑え気味。1幕後の休憩時には3幕終盤でダイヤモンド・ヴォイスと呼ばれるテオリンの輝きある強い声と互角に渡り合えるのかどうか、心配なくらいでした。しかし、2幕、3幕と進むにつれて声量はどんどんアップ。テオリンと相対したヤマ場では、堂々たる歌声を披露してくれました。
ピットの中のダン・エッティンガー指揮、東京フィルハーモニー交響楽団はひとつひとつのフレーズを丁寧に演奏。ジークフリートとブリュンヒルデが、ジークフリートの動機とワルキューレの動機に合せて、歌い上げるクライマックスでは、特にたっぷり聴かせようとの指揮者の意図が感じられました。ところがそこでフランツが、オーケストラよりも速めのテンポで歌い、全体を牽引して行くような箇所も見受けられました。前進あるのみ。なんとも、頼もしいフランツのジークフリートでありました。

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2010年3月6日のニュース