[ 2010年3月6日 06:00 ]

バイロイトでは、「トリスタンとイゾルデ」のイゾルデを演じたイレーネ・テオリン

 「トーキョー・リング」において、プロダクションの柱となったのは、演出家のウォーナーであることは誰もが認めるところです。ウォーナーの演出の最も優れたところは、ワーグナーが主題としていた事象を、セットや衣裳、演技などでデフォルメし、分かり易くしているところだと私は考えます。それを本作ではっきりと認識することができました。第1幕の前奏部分、出てくるはずのないさすらい人(ヴォータン)が、袖からひょっこり顔を出して、舞台上に工具と飲み物のようなものを置いて行きます。また、ミーメに入れ知恵をしに登場する際、ナイトヘーレ(大蛇に変身したファフナーがニーベルングの指環や財宝を隠して眠っているという洞窟)の地図を握らせます。「ラインの黄金」や「ワルキューレ」でさまざまな画策に飛び回っていたヴォータンですが、すっかり親らしくなって“お膳立てする”側に回っていたのです。

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2010年3月6日のニュース