「虎ハンター」小林邦昭さん、68歳で死去 穏やかな人柄隠しヒール役に カミソリ入り封筒届くことも
元プロレスラーでタイガーマスクとの数々の激闘から「虎ハンター」の異名を取った小林邦昭(こばやし・くにあき)さんが9日、死去した。68歳。長野県出身。新日本プロレスが10日、発表した。死因は明らかにしていない。
今年2月にすい臓がんと診断され、闘病してきた。関係者によると、ここ2週間ほど体調が悪かったという。新日本プロレスは哀悼の意を表し、きょう11日の仙台大会で10カウントゴングセレモニーを実施する。
小林さんは1972年に16歳で新日本プロレスに入門し、73年にデビュー。80年からはメキシコと米国で修業し、得意のキック戦法に磨きをかけながら「キッド・コビー」のリングネームで活躍した。
82年に帰国すると、当時絶大な人気を誇っていた初代タイガーマスクに挑みかかり、ライバル抗争が勃発。タイガーマスクをコーナーに逆さづりにし、覆面レスラーの命ともいえるマスクを剥ぐ“無法殺法”などでヒールに徹した。タイガーマスクのファンからは連日、抗議の手紙やカミソリ入りの封筒なども届いた。全日本プロレスにも一時参戦し、三沢光晴さんの2代目タイガーマスクとも戦った。メキシコ遠征中に習得したフィッシャーマンズ・スープレックスなどが得意技だった。
アクション映画界の世界的スター、ブルース・リーの大ファン。その主演映画「燃えよドラゴン」と出合ってから「永遠のヒーロー」と憧れるようになった。トレードマークの赤のパンタロンスタイルはブルース・リーのカンフースタイルを模したものだ。
リングを下りると、穏やかな人柄で愛された。食へのこだわりも強く、2000年4月の引退後に新日本プロレス道場の管理人となって以降は、ちゃんこ鍋など絶品手料理を振る舞って若手レスラーを喜ばせた。
92年7月に大腸がんが見つかって以降は長く病との闘いが続いた。この時は手術後、約半年でリングに復帰したが、99年にはがんの肝臓への転移が見つかり、肝臓の切除手術を受けた。その際に大きな手術痕ができたことが引退を決意する理由となった。その後も肺への転移が見つかり、その都度、病をはねのけたが、ついに帰らぬ人となった。
【小林さんの“伝説”】
▽カミソリ傷 ヒールに徹した小林さんの元にはタイガーマスクファンから危険な郵便物がいくつも届いた。カミソリ入りの封筒が届き、開ける際に手を負傷。右手に2つの傷痕が残った
▽マスク高騰 小林さんが一部を破った初代タイガーマスクの覆面は専門店などで高値で売られている。プロレスマスク収集が趣味の古坂大魔王は「350万円だったので購入を断念した」と明かした
▽大食い 新弟子時代、新幹線で先輩に「好きなものを食え」と言われ、名古屋―東京間で食堂車のメニューを全て食べた
▽料理上手 プロレス界一の料理上手。引退後は新日本プロレスの寮長や管理人として選手の食事に腕を振るった
小林 邦昭(こばやし・くにあき)1956年(昭31)1月11日、長野県出身。丸子実高(現丸子修学館高)を中退し、72年に新日本プロレス入門。73年にデビュー。84年に「維新軍団」の長州力、マサ斎藤らと新日本を離脱、全日本に参戦。85年にNWAインターナショナル・ジュニアヘビー級王座、新日本に復帰した87年にIWGPジュニアヘビー級王座を獲得。00年、獣神サンダー・ライガー戦で引退。
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