守られるべきは選手の権利!井岡ドーピング騒動でJBCが面目を保つことに固執すれば、正答は出せない

[ 2021年5月16日 10:00 ]

質問状に対するJBCの回答書についてオンラインで会見したボクシング畑中ジムの畑中清詞会長
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 またしてもボクシング界の問題が法廷に持ち込まれることになるのだろうか?昨年大みそかにWBO世界スーパーフライ級王者・井岡一翔(32=Ambition)に挑戦した田中恒成(25)が所属する畑中ジムの畑中清詞会長は15日にオンラインで会見し、日本ボクシングコミッション(JBC)に対して法的手段も視野に入れていることを明かした。

 畑中会長はJCBに対し、「手順」と「時間」の2つに“疑念”があるとし、「本当のことが知りたいだけ」と訴えた。前回のコラムでも書いた通り、JBCは日本アンチ・ドーピング機構(JADA)には加盟していないが、検体をAとBの2つ採取するやり方は同じ。畑中会長も検体採取については問題がなかったことを認めている。ところが、「井岡の検体から大麻成分が検出された」とされるところから迷走が始まった。井岡陣営に検査内容を伝えず、結果が確定する前に警察の介入を許した。そして試合から4カ月も過ぎて週刊誌報道で疑惑発覚…畑中会長も「失態」と指摘した通り、混乱を招いたのはJBCの不手際だ。

 国際基準では、ドーピング違反が認定されれば、選手は競技成績の抹消や資格停止など厳しい制裁が科される。そのため、選手側にも権利が保障されている。A検体の陽性だった場合は選手に通知され、違反が疑われた選手はB検体の分析を要求する権利、そして分析に立ち会う権利もある。Bが陽性だった場合に聴聞会が開かれ、裁定が下されるのが通常の流れで、さらに裁定に不服申し立てをする権利も認められている。

 JBCは公式試合の認定やライセンス交付などボクサーに対して強い権限を持つ。これまでも体重超過したボクサーをライセンス停止にするなど、ルール違反に対して厳しい処分を科してきた。ドーピングに関して完全に国際基準にのっとる必要はないにしても、処分という形で権限を行使できる立場である以上、選手の権利も担保しなければならない。だが、今回の騒動では、本来なら与えられるべき権利が井岡に示された形跡は見えない。報道による発覚後に倫理委員会を立ち上げるなど対応は後手後手。しかも「審議に影響を与えることを避ける」を名目で倫理委員会のメンバーは伏せ、調査状況も公表していない。畑中会長が不信感を募らせるのも当然だろう。

 仮にドーピング違反を認定して試合を無効とした場合、田中のプロ初黒星は消え、8位まで落ちたWBOランキングが井岡戦前の1位に戻る可能性もある。1位と8位では今後の青写真も大きく変わってくる。裁定を待つだけの空白の時間は損失でしかない。いまだ裁定を下せない状況が続くことは、本来の当事者でない田中の権利までも侵害していると言えるかもしれない。

 JBCの永田有平理事長によると、倫理委員会のメンバーは外部の有識者で、5月中に結論を出す方針だという。両陣営、そしてファンも納得する結論を出すのは困難を極めるだろう。JBCの面目を保つことに固執すれば、正しい答えは出せない。倫理委員会には選手の権利を守るという“良識”を持って結論を導き出すことを期待したい。(記者コラム・大内 辰祐)

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