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村田諒太 初防衛戦から9カ月、次戦の見通し立たなくても…「有意義な時間」

[ 2020年9月24日 05:30 ]

インタビューに応じ、現在の心境を語った村田諒太
Photo By スポニチ

 プロボクシングWBA世界ミドル級王者・村田諒太(34=帝拳)が昨年12月に初防衛戦を戦ってから23日で9カ月が経過した。新型コロナウイルスの世界的大流行で停滞していた興行が再開され、軽量級では日本人選手の世界戦も発表されているが、村田の次戦は見通しが立っていない。そんな状況で現役日本人最年長&最重量の世界王者は何を考え、いかに行動しているのだろうか。

 まだトンネルの出口は見えない。だが、悲観はしていない。コロナ禍で試合が出来ない期間も村田は試行錯誤を繰り返しながら進むべき道を探している。

 「よく人から『試合できなくて大変ですよね』とか言われるんですけど、実はそんなでもなくて。ボクシングを改めて研究するというか、見直したりとか…結構、有意義な時間を過ごせています」

 昨年は7月に王座返り咲きを果たし、12月には難敵バドラー(カナダ)を5回TKOで下して初防衛と充実した1年だった。今年はビッグネームとの対戦を熱望していたが、新型コロナという“見えない敵”の出現によって試合機会すらないまま9カ月が過ぎた。それでも世界王座を保持していることが救いになった。

 「これがタイトルを持っていない状態だったら引退しか見えてこない。まだ、タイトルマッチをする権利が自分にはあるって思えることは、ものすごくありがたいこと。自分は恵まれてますね。タイトルを失った状態だったら、焦りはすごかったと思います」

 国内にはミドル級の選手が少なく、試合はおろかスパーリングを行うのも難しい状況。村田自身も「そこに焦点を当てればハンデは多い」と認める。だが、もともとマニアックなほどボクシングを理論的に突き詰める男は、この期間にじっくりと過去の自分と向き合い、検証し直した。

 「次の試合が決まっていたら出来なかったことでしょうね。これまでは調子の良し悪しを感覚的に判断していたけど、実は思い込みだったり、間違いだったりしたこともある。技術的なことや体の使い方とか、いろんなことがつながって…今やっと頭の中が整理ができて面白いですね」

 長男が始めた野球のピッチング動作を参考にしたり、マラソン日本記録保持者の大迫傑(ナイキ)との対談で「限界値を上げることから余裕が生まれる」と聞いてロードワーク中に限界値を上げるメニューを試すなど他競技の理論も柔軟に採り入れている。だからこそ「早く試合がしたい」という気持ちは強くなっている。

 「何のために練習しているのか、いつ試合ができるのか、いらぬ焦りもあることはあるけど、自分がコントロールできないことは悩んでもしょうがない。でも悩んでいる。よく建設的な考え方って言うけど、ずっと同じ方向に伸びていくのは無理。崩れても、また積み重ねていくしかない。その繰り返しです」

 揺れ動く自分の気持ちも受け入れながら前へと歩を進めている。

 ◆村田 諒太(むらた・りょうた)1986年(昭61)1月12日生まれ、奈良市出身の34歳。南京都高(現京都広学館高)―東洋大。11年世界選手権ミドル級銀、12年ロンドン五輪同級金メダル。13年8月プロデビュー。17年5月に世界初挑戦でエンダム(フランス)に判定負けも、10月の再戦で7回TKO勝ちしてWBA同級王座獲得。日本人五輪メダリスト初の世界王者に。18年10月にブラント(米国)に敗れて陥落も7月の再戦で王座に返り咲いた。プロ戦績は16勝13KO2敗。身長1メートル83・5、リーチ1メートル90の右ボクサーファイター。

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