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辰吉VS薬師寺――因縁絡み合い、血しぶき舞った壮絶12R 浪速のジョーは燃えつきず

[ 2020年5月24日 05:30 ]

94年12月4日 WBC世界バンタム級王座統一戦で、薬師寺保栄(右)が辰吉丈一郎の顔面にパンチを炸裂させる
Photo By スポニチ

 【Lega-scene あの名場面が、よみがえる。~ボクシング編~】昭和、平成の名場面をスポニチ本紙秘蔵写真で振り返る「Lega―scene(レガシーン)」。ボクシング編のラストを飾るのは、1994年12月4日に行われたWBC世界バンタム級王者・薬師寺保栄と暫定王者・辰吉丈一郎の“世紀の一戦”です。史上初の日本人同士による王座統一戦は、両者が流血する壮絶な打ち合いに。死力を尽くしての激闘は日本中を感動させました。

敗れた辰吉が薬師寺を抱え上げ
勝利を称えた。
男と男が魂と拳をぶつけ合った36分間。
終了のゴングが
2人のわだかまりを氷解させた。

「薬師寺君は強かった。試合前に
侮辱したことを謝りたい」
「辰吉君は自分が26戦してきた中で
一番強い相手だった」

“世紀の一戦”は試合前から
世間の注目を集めた。
正規王者は薬師寺だが
知名度や人気は辰吉が上。
そして辰吉には、網膜剥離からの復活という
ストーリーもあった。
対戦が決まると
両陣営は激しく火花を散らした。
名古屋開催か?大阪開催か?
両陣営とも譲らず、興行権の入札は
3億4200万円の高額になった。
辰吉にとって薬師寺は
3年前にスパーリングで打ちのめした相手。
そんな因縁もあって
両者の舌戦もヒートアップした。

KO決着必至と言われた試合は
序盤から白熱。
死力を尽くした両雄の戦いに
観衆は魅了され
勝敗に関係なく感動を呼んだ。
結果は予想を覆して
薬師寺が判定2―0で勝利。
スポーツライター二宮清純氏は
「辰吉時代の終えんを告げた」と記した。
だが、辰吉の物語には続きがあった。

 《左目網膜剥離も特例「敗北即引退」のはずが》当時、日本ボクシングコミッション(JBC)には網膜剥離の選手はライセンスを失効するルールが存在した。93年9月に左目の網膜剥離と診断された辰吉は海外で復帰し、薬師寺戦には「負けたら引退の条件」で特例としてリングに上がったが、引退を拒否して再び海外で再起を図った。最終的にJBC側が折れ、世界戦に限って国内リングへの復帰が認められた辰吉は、スーパーバンタム級での2度の世界挑戦を経て97年11月22日、王座に返り咲いた。そして、99年に引退表明も撤回。50歳になる現在も“現役”であり続けている。

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