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“最強モンスター”尚弥、世界一!憧れと伝説のドネアに流血判定勝利

[ 2019年11月8日 05:30 ]

WBSSバンタム級トーナメント決勝   ○(WBA&IBF王者)井上尚弥《判定3―0》(WBAスーパー王者)ノニト・ドネア● ( 2019年11月7日    さいたまスーパーアリーナ )

トロフィーを手にした井上尚弥(撮影・島崎忠彦)
Photo By スポニチ

 モンスターが「最強」の称号を手に入れた。ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)バンタム級トーナメント決勝で井上尚弥(26=大橋)がノニト・ドネア(36=フィリピン)に3―0で判定勝ち。5階級制覇のレジェンドを下してWBSS優勝を飾り、ムハマド・アリ・トロフィーを獲得した。WBA同級スーパー王座を統一するとともに3度目の防衛、IBF王座は初防衛に成功した。

 苦しみながらもやはり井上尚はモンスターだった。2回に左フックを浴びて右目上から激しく出血。その影響で3回以降は「ドネアが二重に見える状態」に陥ったという。5回には右強打でぐらつかせた。その一方、鼻血も流して傷つき、9回には右を受けてふらつきクリンチで逃れる場面もあった。一進一退の攻防。だが11回に強烈な左ボディーでダウンを奪う。フルラウンドの激闘を終えた井上尚は笑みを浮かべてドネアと抱擁し、健闘を称え合った。

 「ドネア選手は本当に強かった。世代交代とか言える内容ではなかったけど勝つことができて良かった。自分のキャリア一番の試合になった」

 約3年6カ月ぶりにKO勝利を逃し、世界戦での連続KOは8で止まったが、WBSS優勝という最大の目標をクリア。大橋会長は「心配されたタフネスさが証明された12ラウンドだった」と前向きに捉えた。

 井上尚にとってドネアは高校生のころから憧れていた特別な存在。WBSSの組み合わせは逆ブロックだったが、運命に導かれるように決勝での対戦が実現。最高の仕上がりで決戦の時を迎えた。
 6日の計量後の取材対応を「引き締めのため」にキャンセルした大橋会長が危惧していたアクシデント。右目上の負傷は試合後に5針縫う重傷だったが、冷静にポイントアウトする戦術に切り替えて勝利をつかみ取った。

 「これがボクシング。甘い世界じゃないことは自分も分かっている。今日の経験を生かして次から戦っていきたい」
 試合後にはトッド・デュボフ社長も同席して米トップランク社と複数年契約を結んだことが発表された。米国を含めグローバルな活躍を同社がサポートするという。井上尚は「拓真の敵討ちをしたい」と弟に勝ったWBC王者ウバーリとの統一戦も視野に入れながら、さらなる強敵たちとの戦いを求めていく。

 今月1日に発売された著書「勝ちスイッチ」ではプライベートな話題にも触れ、豪邸を新築中だと明かし、一家の大黒柱として愛する家族のために「負けられない理由が増えた」と記した。戦い続ける理由はほかにもある。日本ボクシング界のリーダー的存在としての自覚は強く、ボクシング界全体や若い選手が活躍する場について発言することが増えた。大好きな男性ボーカルユニットC&Kが井上尚のために作った曲「道」。「足跡はやがて、あとに道を造るから」という歌詞に自身のボクシング人生を重ね、WBSSに足跡を残したモンスターは次の一歩を踏み出す。

 ▽ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS) 米独のプロモーターが企画した賞金争奪トーナメント。優勝者には階級最強の証としてムハマド・アリ杯が贈られる。第1シーズンは17年9月にクルーザー級とスーパーミドル級の2階級で開催され、賞金総額は5000万ドル(約54億5000万円)。第2シーズンは18年10月に開幕。バンタム級、スーパーライト級、クルーザー級の3階級で実施された。

 ◆井上 尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日生まれ、神奈川県座間市出身の26歳。新磯高(現相模原青陵高)時代に高校7冠などアマ通算81戦75勝(48KO・RSC)6敗。12年10月プロデビュー。14年4月にプロ6戦目でWBC世界ライトフライ級王座獲得。同12月にWBO世界スーパーフライ級王座を獲得し、当時世界最速の8戦目で2階級制覇。18年5月、マクドネル(英国)に1回TKO勝ちして16戦目で3階級制覇を達成した。身長1メートル64・5、リーチ1メートル71の右ボクサーファイター。家族は咲弥夫人と長男・明波君。

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