五輪からボクシング消える?疑惑のAIBA新会長就任、IOC最後通告にも協会危機感なし

[ 2018年11月21日 11:00 ]

2020 THE TOPICS 話題の側面

国際ボクシング協会(AIBA)の総会に臨むラヒモフ氏(右)
Photo By タス=共同

 統括団体の国際ボクシング協会(AIBA)の運営を問題視してきた国際オリンピック委員会(IOC)は、30日から東京で開く理事会で20年東京五輪実施競技からの除外について審議する。AIBAの新会長に“疑惑の人物”が就任し五輪での存続に黄信号がともる中、地元開催へ準備を進めてきた日本ボクシング界はジレンマの日々が続く。ボクシングは本当に五輪から消えてしまうのか――。

 国内アマチュアを統括する日本ボクシング連盟は、東京五輪での競技実施をIOCに求める「100万人署名活動」を全国展開している。25日までに集まった署名は、来日するバッハIOC会長へ提出予定。9月に就任した内田貞信会長は「100万人」の目標を掲げ、「レスリングの時に80万〜90万人分が集まったと聞いている」と説明した。だが、米国やロシアなど強豪国が五輪存続を声高に主張したレスリングと異なり、ボクシング界は一枚岩とは言い難い。

 「ボクシングが五輪から外れる?そんなことあるわけないだろ」

 今月初め、モスクワでAIBAの総会に出席した内田会長は各国幹部の楽観的な態度にがく然とした。AIBAが10月、IOCから東京五輪の実施競技から除外すると“最後通告”をされた直後にもかかわらず、だ。「それもボクシングが盛んな国の人たちです」。欧米の報道が伝わっていない可能性もあり、危機感はまるで感じられなかったという。

 AIBAは16年リオ五輪で審判の不正が明るみに出て以来、IOCから「ガバナンス(組織統治)に問題あり」と指摘され続けてきた。反ドーピングへの対応の遅れや不透明な財政面など問題が山積みで、IOCは昨年12月に分配金支給を停止。組織内の対立も深刻で、使途不明金を追及された当時の呉経国会長(台湾)が昨年11月に辞任すると、今年1月にはファルチネリ暫定会長(イタリア)も突然辞任し、ガフール・ラヒモフ氏(67=ウズベキスタン)が会長代行に就任した。

 だが、ラヒモフ氏は米財務省などが「ウズベキスタンの代表的な犯罪者の一人で、ヘロイン売買に関わる重要人物」としてブラックリストに載せている。AIBAの幹部を長年務め、山根明・日本連盟前会長のような組織内での“支配力”も指摘される。IOCがラヒモフ体制を問題視するのは当然で、10月のユース五輪(アルゼンチン)に同氏を招待しなかったほどだ。

 今月のAIBA総会で行われた会長選ではラヒモフ氏が86票を集め、51票だった元ソ連五輪代表のコナクバエフ副会長(カザフスタン)を抑えて会長に正式就任。日本オリンピック委員会(JOC)とも協議し「五輪存続にはコナクバエフ氏の方がいい」と投票した日本連盟を落胆させ、ラヒモフ氏を排除したいIOCの期待も裏切る結果となった。

 ラヒモフ新会長は自身の疑惑を否定し、組織改革と五輪での競技実施を公約。対立候補を支持した日本連盟がAIBA内で大規模な五輪存続運動を展開するのは難しくなった。できることは署名活動や国際大会でのアピールなど地道な取り組みに限られる。世界的なムーブメントを起こせないまま、見えない明日へ“ジャブ”を出し続けるしかない。

 ≪プロも署名活動参加≫署名活動にはプロも参加することが決まった。日本プロボクシング協会(JPBA)が全国の加盟ジムへ協力を要請し、20日後楽園ホールで行われた興行でも早速、入場者や関係者に署名を呼びかけた。JPBAの渡辺均会長は「五輪競技から外れたらプロとしても大問題。一般の人々のボクシングへの認識が低くなってしまう」と話した。

 ≪露系犯罪組織所属か≫ラヒモフ氏はボクシング選手や指導者として活躍後、貿易商としてウズベキスタンを代表する実業家となった。一方でヘロイン売買など非合法な取引も行っているとされ、米財務省が12年に金融制裁を科したロシア系犯罪組織「ブラザーズ・サークル」7人のうちの一人だった。同国オリンピック委員会の副会長を務めるなどスポーツ界でも絶大な地位を築いており、山根明・日本連盟前会長は同氏から還暦祝いの時計を贈られたと交友関係を明かしている。

 ≪ラヒモフ氏参加させない案検討も…≫ラヒモフ氏のAIBA新会長就任後、IOCは「(30日からの理事会で)議論がどんな結果となっても、選手を守り、東京五輪でボクシングを実施するべく全力を尽くす」と声明を発表した。ボクシング競技自体を除外する意向ではないことがうかがえる。AIBAは13日、組織の改革案となる報告書をIOCに送った。詳細は明かされていないが、内田会長によると、判定問題については試合後の異議申し立てによるビデオ検証の復活が含まれているという。IOCが改革案は不十分と判断した場合、東京ではAIBAを排除しての開催方法も検討。考えられるのは選手の「個人資格」での参加だが、「審判の選任など運営面の問題があって難しい」(日本連盟・鶴木良夫副会長)。ラヒモフ会長を五輪に参加させないため地域組織の「AIBAアジア」に運営を託す“ウルトラC”も検討されているというが、IOCからのテレビ放映権料の分配先をどうするかなど問題が多い。

 ≪プロアマ初合同会議、「共同声明」提出へ≫日本ボクシング連盟とJPBAは20日、都内で初の合同会議を開き、今後は協力態勢を築くことで合意した。アマとプロの歴史的和解を機にボクシングの五輪存続を求める「共同声明」を発表し、IOC理事会へ提出することも決めた。プロの五輪参加についてはJPBA側が慎重な姿勢を示しており継続審議となったが、国内プロの東京五輪出場は事実上難しいことも明らかになった。日本連盟の鶴木副会長によると、五輪出場枠獲得を目指す国際大会の代表選考会が来年3月に予定されており、プロ側の方針が現時点で未定のため、日程的に厳しいという。

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