宮尾綾香、再び世界戦の舞台へ 世界王者返り咲きで“ボクシング界の上戸彩”を卒業
ボクシングの元WBA女子世界アトム級王者・宮尾綾香(35)が世界戦の舞台に帰ってくる。今月20日に後楽園ホールで元WBO同級王者の池山直(49=フュチュール)とWBA同級暫定王者決定戦を行う。当初は宮尾が王者モンセラット・アラルコン(メキシコ)に挑戦する予定だったが、アラルコンの怪我により中止となり、WBAは急きょ暫定王座を設けて決定戦を承認し、因縁の相手との再戦が実現する運びとなった。
宮尾は2012年9月にWBA女子世界アトム級王座を獲得し、5度の防衛に成功したが、15年10月にWBC同級王者だった小関桃(青木=今年1月引退)との統一戦に敗れ、王座から陥落。ワタナベジムに移籍し、心機一転で臨んだ16年12月のWBO同級タイトルマッチで6回にスリップダウンした際に右膝前十字じん帯を断裂し、池山にTKO負け。王者返り咲きどころかボクシング人生の危機に立たされた。
そんな悲劇に見舞われても宮尾のボクシングへの熱が冷めることはなかった。2カ月後にはジムに戻り、座ったままでシャドーを開始。昨年7月に手術を受け、約1カ月半の入院。手術直後は激しい痛みに加え、全身麻酔の影響による体調不良もあり一時的に車いす生活も経験した。ようやくリングでの練習が出来たのは今春。そして6月、1年半ぶりの再起戦を4回TKO勝利で飾り、再び世界戦の舞台にたどり着いた。
宮尾は「勝負にたら、ればはない」と前置きした上で、「あの時(前回の池山戦)にベルトを獲って満足していたら今の自分より弱いんだろうなと思う。ここまでの1年半でいろんなものを吸収できたので」とブランクが無駄ではなかったと強調する。暫定王座決定戦になったことは「残念」と言うものの、池山との再戦を以前から希望。池山は今年7月に岩川美花(高砂)に判定負けしてWBO王座から陥落。1度は引退を表明しており、今回の話がなければ、再戦は実現しないはずだった。「流れは来ていると思う。あとは自分の努力だけ。ケガをしたこと、復帰まで1年半かかったことも“このためだった”と思える結果を」と意気込む。池山には06年4月にも4回TKO負けしており、今回も勝負の行方は分からないが、悔いのない試合をすることを願っている。
6月の再起戦の時、世界王者に返り咲いたら“ボクシング界の上戸彩”の枕詞を外すと宮尾に約束した。早く新しいキャッチコピーを考えなければと、ちょっと焦っている。(大内 辰祐)