プライド懸けた闘いの陰で――名前売る好機逃した恒成と驚かされた王者への“冷遇”

[ 2018年9月25日 09:30 ]

<WBO世界フライ級タイトルマッチ>試合が終了し、田中恒成(左から2番目)は木村翔(右)を労う(撮影・後藤 大輝)
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 3分×12ラウンド、計36分間の殴り合い。24日に名古屋市で行われたWBO世界フライ級タイトルマッチは見応えのある試合だった。“雑草王者”木村翔(29=青木)VS世界最速3階級制覇を狙う“エリート”田中恒成(23=畑中)の日本人対決。意地と意地、プライドとプライドがぶつかり合う壮絶な打ち合いの末に田中が2―0で判定勝ちし、日本人6人目の3階級制覇王者となった。

 残念だったのは今年の年間最高試合の候補にも挙がるであろう好カードがテレビで全国放送されなかったことだ。生中継は中京地区のみ、録画放送も関東ローカルに限られ、しかも2日後の深夜という。商業的なこともあるのだろうが、スポーツの魅力を伝えることもメディアの使命であるとするなら、少なくとも録画放送は全国で見られるようにするべきだった。多くのボクシングファンもそう望んでいたと思う。

 もちろん試合の内容や勝った田中のコメント、敗れた木村の言葉は新聞やネットで報じられる。だが、2人の思いが凝縮したリアルな一発一発のパンチは文字や写真だけでは伝えきれない。映像なら簡単に伝わるのに…もったいないと思う。田中にとっては全国に名前を売るチャンスを逃したことになる。

 木村への“冷遇”にも驚かされた。田中の地元・名古屋での興行ゆえに主役が田中であることは仕方ない。世界最速タイとなる3階級制覇への期待も理解はできる。それにしても告知ポスター、パンプレットはあまりに偏っていた。2本をベルトを手にポーズを決める田中が中央に大きく配置され、その後方に小さくTシャツ姿の木村。チャンピオンなのにベルトもない。おまけに名前も挑戦者の田中が上で、王者の木村が下と、完全に“格下”扱い。もっと木村を手強い相手としてアピールしておけば、結果的に勝った田中の株だって上がったはずだ。

 もっとも田中本人は木村をリスペクトし、調印式後の会見では、チャンピオンに先にコメントを求めるように司会者に促す気遣いも見せた。そして危機感を持って練習を積み、覚悟を決めて臨んだ一戦で真っ向勝負を挑み、快挙を成し遂げた。重圧にも打ち勝った田中には拍手を送りたいし、今後の飛躍にも期待している。

 そして敗れた木村にも再起を期待したい。心境を問われ「今はボクシングをしたいとは思わない。燃え尽きました」と答えたが、敗戦直後の一時的なものだと信じている。“雑草”はそんなにヤワじゃないはず。日本人で初めて中国で王座を獲得、防衛した型破りな男はこの日、腫れたままの顔で電車に乗り、会場から名古屋へ移動したらしい。王座奪回を目指してもよし、階級を下げていく“逆3階級制覇”だって木村なら可能かも。体と心を休め、再びリングに戻って来る日を楽しみにしている。(大内 辰祐)

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