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伊藤雅雪 ディアスとの王座決定戦へ意気込む「相手が弱ってくる後半にKOしてベルトを持ち帰る」

[ 2018年7月20日 20:50 ]

世界初挑戦に意気込む伊藤雅雪((C)NAOKI FUKUDA/WOWOW)
Photo By 提供写真

 ボクシングの元東洋太平洋&WBOアジア・パシフィック・スーパーフェザー級王者の伊藤雅雪(27=伴流)が28日(日本時間29日)、米フロリダ州キシミーでWBO世界同級王座決定戦に臨む。

 相手はWBO2位の伊藤よりも上位にランクされる1位のクリストファー・ディアス(23=プエルトリコ)。5年のプロキャリアで23戦全勝(15KO)の戦績を残しているホープだ。初の国外試合が世界戦となる伊藤は「オッズをつけるとしたら7対3か6・5対3・5で僕が不利」とリスキーな試合であることを認めながらも、「ダラダラやるつもりはない。相手が弱ってくる後半にノックアウトしてベルトを持ち帰る」と自信を見せている。そんな伊藤に、大舞台を前にした心境や攻略イメージなどを聞いた。

 なお、伊藤は今月2日に日本を出発し、米カリフォルニア州ロサンゼルスでディアス戦に向けた最終調整を行っている。

 ■倒しにいく気持ちを前面に出し目下7連勝5KO

 ――プロデビューから9年、26戦目(25戦23勝12KO1敗1分)での世界挑戦となりますね。

 「東洋太平洋王座を取ってから、何回か防衛したら世界挑戦できるのかなと思っていたけれど、そう簡単ではありませんでしたね。そのころは自分でも世界挑戦は非現実的なイメージがありましたが、今はとうとう決まったという感じです」

 ――これまでの25戦は全て都内での試合でしたが、米国のリングに上がっているイメージはできていますか。

 「不安はあるけれど、リングに上がれば同じかなと。ブーイングされる覚悟はあります(笑い)。ただ、過去に何度もロサンゼルスでトレーニングしてきて、合間に試合も見ているので米国の会場の雰囲気は分かっています」

 ――客観的に見た「伊藤雅雪」というボクサーは、どんな選手でしょうか。

 「パンチを芯ではもらわないので、相手にとっては意外にやりにくのではないかと思います。スピードがあって、見た目以上にパワーもあるので崩しにくいイメージなのでは…」

 ――スピード、パワー、テクニック、スタミナ、経験値など自分の戦力を10点満点で分析してみてください。

 「そうですね…。スピード=8・5、パワー=7・5、テクニック=8、スタミナ=8、経験=7、といったところでしょうか。10をつけられるものはないけれど、全体的に8ぐらいだと思います。ただ、パンチの見切りや順応する能力、当て勘、よける勘など数字に表せない能力は高いと思っています」

 ――このところ伊藤選手は7連勝(5KO)をマークしています。以前と何が変わったのでしょうか。

 「倒しにいく気持ちだと思います。それまでは勝てばいいという気持ちがあったけれど、最近はリスクを冒してでも倒さないといけないという気持ちが強いですね。お客さんの求めるものを考えるようになり、自然に手数も出るようになりました。一発で仕留めることは難しいので、手数を出して倒すボクシングをするようになりました。それが7勝5KOという結果につながっていると思います」

 ――技術面の変化もありますか。

 「これまではワンツーで終わる、2発しか打てないボクサーだったと思いますが、3発、4発、5発とパンチを出せるようになり、それが倒せるきっかけになっていると思います」

 ――それらは3年ほど前からの米国合宿で身に付けたものと言っていいのでしょうか。

 「ロサンゼルスでトレーニングをするようになってボクシングのスタイルが変わりました。自分から打っていかないといけない、ファイト(打ち合い)をしなければいけない、勝負に行く場面を必ずつくらないといけない、ということを教えてもらいました」



 ――自分のボクシングで最も自信のある点はどこでしょうか。



 「スピードと運動神経だと思います。直線的なパンチに関しては僕の方が絶対に速いと思います。相手が振ってきたパンチはガードして、そこに右ストレートかアッパーを入れたいですね」



 ――では、目指すボクシングは?



 「遠くでも近くでも戦える、距離を操れるボクサーになりたいですね。オールマイティーで、しっかり倒せるスタイル。少しずつ近づいている実感はあります。以前は接近戦は得意ではなかったけれど、距離(バックステップ)で相手のパンチを外すとそこでいったん途切れてしまうので、スリッピングで外しながら前(至近距離)でパンチを当てていくボクシングを心がけています。それを極めればディアスにも勝てるでしょう。完成形は見えてきています」



 ――課題もありますか?



 「継続して打ち続ける力でしょうか。効かせるシーンはあるけれど、そこから5発、6発といけたと思っても倒しきれなかったりするので、それ以降の継続力、回転力ですね。爆発力、パワーがまだ不足していると思うので、その殻を破りたいですね」



 ■「ベルトを持ち帰る確固たる気持ちと自信がある」



 ――今回の相手、ディアスに関してはどんな印象を持っていますか。



 「ディフェンスの勘が良くてパンチをもらわない。それでいて一発当たったときの反応が優れている。5発、6発、7発とサンドバッグを叩くみたいに手が出ますね。そういう部分は井上選手(井上尚弥/WBA世界バンタム級王者)とダブる部分があります。当て勘もよく、世界チャンピオン級の選手だと思います。



 ――ウイーク・ポイントもありそうですね。



 「穴はあります。たとえばディフェンスがワンパターンであるとか。守るときにガードをして固まることがあるので、接近戦はあまり得意ではないのかなと。それに、相手のパンチ全てに左フックのカウンターを合わせようとするので、そのあたりにチャンスがあるのかなと思います」



 ――伊藤選手にとって理想的な展開は?



 「前半で倒そうとは思っていないので――当たって倒れてくれたらいいけれど――なかなか世界戦のレベルではないことなので、しっかり当てていって後半になって相手が弱ってきたところで倒したいですね」



 ――長丁場をイメージしているわけですね。



 「7回から10回の間ぐらいでディアスを下がらせればこっちの勝ちだと思っています。最終的には相手が嫌な顔をして下がっているイメージがあります」



 ――逆に、避けたいパターンは?



 「嵐のような連打に巻き込まれたら僕もぐちゃぐちゃになって余計なパンチをもらって熱くなってしまうので、それは避けたいですね。あとは交差するシーンが怖いですね。ディアスは左フックの当て勘がいいので。全ラウンドを通して左フックには気をつけます」



 ――客観的にみたオッズ(賭け率)は、どのぐらいになると思いますか。



 「ディアスが7、僕が3といったところ、いや6・5対3・5かな。それぐらい難しい試合だと思います。不利の中で戦うことは覚悟のうえですが、それでも僕はいけると思っています。僕は“持っている”のでやっちゃうかなと。自信はあります」



 ――あらためて、試合にかける意気込みと自信を聞かせてください。



 「勝てば人生が180度変わるので、これまでで最強の自分をつくり上げているところです。僕は動じるタイプではないので、土壇場になればやりきれる自信はあります。相手から全てを奪う、全て持ってくるつもりです。どんな状況に立たされてもベルトを持ち帰る確固たる気持ち、自信があります」



 ――ずばり、どんな結果を出しますか。



 「前半はしっかり見て、中盤でダメージを与え、後半にノックアウト!伊藤雅雪がKOで勝ちます」



 なお、WBO世界スーパーフェザー級王座決定戦、伊藤雅雪vsクリストファー・ディアスは29日午前11時からWOWOWライブで生中継される。



 ◆伊藤 雅雪(いとう・まさゆき)1991年(平3)1月19日、東京都江東区生まれの27歳。本名は伊藤雅之。伴流ジム所属。駒大高3年時にボクシングを始め、駒大1年の09年5月にプロデビュー。13年9月にWBCユース・ライト級王座、15年8月に東洋太平洋スーパーフェザー級王座、16年12月にはWBOアジア・パシフィック同級王座を獲得。身長1メートル74、リーチ1メートル74の右ボクサーファイター。プロ通算25戦23勝(12KO)1敗1分け。家族は妻と4歳の長女、2歳の次女。

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