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大けが乗り越え涙の復帰 “ボクシング界の上戸彩”宮尾綾香の新たな挑戦に注目

[ 2018年6月19日 12:30 ]

KO勝ちに笑顔の宮尾綾香
Photo By スポニチ

 年を取ると涙腺が緩くなるというのは本当らしい。今月7日、1年半ぶりの復帰戦をKO勝利で飾った“ボクシング界の上戸彩”こと元WBA女子世界アトム級王者・宮尾綾香(34=ワタナベ)の涙に思わずもらい泣きしそうになった。

 名前は知っていたが、直接会って話を聞いたのは前日が初めて。特に思い入れがある選手だった訳ではない。相手は普通にやれば勝てる相手、試合も劇的な勝利という感じでもなかった。ただ、試合後に「ただいまリングに戻りました」とあいさつした後、感極まって言葉を詰まらせた宮尾の姿にグッときてしまった。

 右膝前十字じん帯断裂の重傷…年齢的にも「引退」という選択肢はあったはず。そんな質問もぶつけてみたが、宮尾の答えは実に明快だった。「あのまま諦めるのは嫌だった」「ボクシングを続けるための手術でした」。当然、復帰までの1年半の間には悩みも葛藤も不安もあったはず。それらは飲み込み、試合を終えて関係者への気持ちを言葉に表そうとして、こみ上げる思いを抑えきれなかったのだろう。

 男女を問わず、ボクシングの世界は厳しい。プロテストに合格すれば、プロを名乗れるが、ボクシングで生計を立てることができるのは世界王者を含む一握りの選手だけ。大半のプロボクサーは別に本業を持つか、あるいはアルバイトをしながらボクシングを続けている。そして、多くの人や会社などサポートを受けている。宮尾にも家族をはじめ、支えてくれるたくさん人たちがいた。

 復活への第1歩を踏み出した…というよりは、まだ復活へのスタートラインに立っただけかもしれない。かつてのパフォーマンスを完全に取り戻すのはこれからだろう。それでも宮尾は力強く言った。「戻ってきたからには世界チャンピオンを目指します」と。“ボクシング界の上戸彩”としてではなく、困難を乗り越えた一人のアスリートの新たな挑戦として今後を見守っていきたい。(大内 辰祐)

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