リングでTVカメラにニコッ 拳四朗 自然体から生まれる“別次元の強さ”
25日に行われたボクシングのダブル世界戦は衝撃的だった。WBC世界ライトフライ級王者・拳四朗(26=BMB)が2回KO勝ちで3度目の防衛に成功。もちろん、WBA世界バンタム級王者ジェイミー・マクドネル(32=英国)を1回KOして日本最速プロ16戦目で3階級制覇を果たした井上尚弥(25=大橋)のインパクトも強烈だったが、井上尚の強さが異次元なら拳四朗は強さも別次元だ。
普段から笑顔を絶やさない拳四朗も、さすがに世界戦とあって入場時は引き締まった表情だった。ところがリングに上がり、テレビカメラを向けられるとニコッ!と満面の笑み。これには驚かされた。後日、その瞬間の心境を尋ねると「いつもなんですよね。何でなんでかなぁ〜。カメラを向けられると、なんか笑っちゃうんですよね」と屈託のない答えが返ってきた。もし負けていたら、その笑顔に批判が集中しそうだが、彼にそういうマイナス思考はない。どんな状況でも自分の感情に正直に、自然体で振る舞える。
ボクサーにとって負けることの次に辛いのが減量。誰もが計量前はピリピリし、人を寄せ付けない雰囲気になるが、拳四朗は報道陣にそういう姿を見せない。いつものように好きな食べ物やファッションの話に熱中する。雪国の人が春の訪れを待つながら厳しい冬を耐えるように、楽しいことを考えて辛い時間をやり過ごす。そういう芯の強さも持ち合わせている。
もちろん、メンタル面の強さだけで世界王者になれるほど甘い世界ではない。元東洋太平洋ライトヘビー級王者でもある父・寺地永会長から受け継いだ才能、そして父と二人三脚で鍛え上げた肉体と技術があるからこそ13戦13勝7KOという結果を残せている。今回の防衛戦では前王者ガニガン・ロペス(36=メキシコ)を一撃でKO。パワフルさはなくても「タイミングと当てる場所」によって一発で倒せることを証明してみせた。
3度の防衛は現役の日本人世界王者では最多。「長く愛されるチャンピオンでいてほしい」という父の願いもあり、当面は防衛回数を重ねていくことが目標となる。本人はまだ知名度が低いことを嘆いているが、その魅力的な“拳四朗スマイル”を見せ続けて日本のボクシング界を盛り上げていってほしい。(大内 辰祐)
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