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“神の左”は永遠!!浜田帝拳代表、引退山中に「お疲れさま」

[ 2018年3月2日 08:30 ]

WBC世界バンタム級タイトルマッチ12回戦   ○前王者ルイス・ネリ 2回TKO 同級1位・山中慎介● ( 2018年3月1日    両国国技館 )

試合に敗れるも、ファンから拍手で送られる山中
Photo By スポニチ

 来日時に4キロオーバー。それを落とせずにネリは王座剥奪の失態を演じた。山中との初戦を終えた後にドーピング疑惑が発覚し、それを踏まえての再戦指令。“正々堂々”が求められた試合での失態は、ネリ個人の怠慢だけでは済まされず、論外の出来事と厳しく受け止めたい。この一戦に懸けてきた山中にとって、それは衝撃的な出来事だったはずだ。

 山中には自分のコンディションだけを考えるように、と言ったが、踏み台をストンと外されたようなモチベーションの低下は否めなかった。スタートはよかった。右から左を狙い、ネリが出てきたときに腰を落として迎撃する形。ネリの右ジャブで両手をついたが(スリップの判定)、これが効いており2回、連打を浴びた。いつもの山中らしからぬシーンは、やはり、緊張感が切れてしまっていたとしか言いようがない。

 入門時の山中は、抜群のパンチ力の持ち主だった。が、アマ時代、その割にたいした戦績を残せていない。これは力を出し切れていないのでは、というのが最初の印象。練習でも、良いときと悪いときの差があり過ぎた。武器の左もそうだ。左の強さは天性のものがあったが、最初は練習で出せても試合で出せなかった。

 ただひたすら反復練習の日々。左の強さは、足のスピードと手のスピードが重なるところにある。つまり、踏み込みの鋭さと手の速さ。相手は分かっていても、よけたつもりで伸びてくる左をかわせない。後援者が命名した“神の左”は、天性のものをどう磨くかの努力で誕生した。

 山中の変化は、2010年6月、日本バンタム級王座を獲る前、09年7月から10年3月にかけて3試合連続1ラウンドKO勝利を挙げてからだ。これで倒すコツをつかみ、突っ走り始めた。練習で悪くても本番で力が出せるようになった変化。それが今の地位を築き上げた。明るい性格で皆に慕われる男。その業績を称え、本当にお疲れさま、と言いたい。(帝拳代表、元WBC世界スーパーライト級王者)

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