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スーパー王者に統一王者に正規王者…スッキリしない王者乱立

[ 2018年3月1日 10:50 ]

昨年大みそかの統一戦に勝利し、2本のベルトを手にした田口
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 ボクシングのWBO世界スーパーフライ級王者・井上尚弥(大橋)の3階級制覇挑戦が、5月に東京で実現しそうだ。WBA世界バンタム級王者ジェイミー・マクドネル(英国)のエディー・ハーン・プロモーターが2月中旬、井上サイドと交渉を進めていると英スカイスポーツにコメント。大橋ジムの大橋秀行会長もマクドネルの名前こそ口にしていないものの、「近いうちに発表できると思う」と話している。

 実はWBAのバンタム級には世界王者が2人いる。1人は「レギュラー(正規)王者」のマクドネルで、もう1人が「スーパー王者」ライアン・バーネット(英国)だ。タイトルが2つに分かれたのは、2010年にアンセルモ・モレノ(パナマ)がWBA王座7度目の防衛成功でスーパー王者に昇格し、空位の正規王座決定戦を亀田興毅が制してから。亀田がモレノとの統一戦を行わずに返上した王座を14年に決定戦で獲得したのがマクドネルだった。一方のスーパー王座はモレノ―パヤノ(ドミニカ共和国)―ウォーレン(米国)―ザキヤノフ(カザフスタン)と渡り、昨年10月にIBF王者でもあるバーネットがザキヤノフを破って吸収した。

 スーパー王者は長期防衛の実績が認められて昇格するものだが、その王者を破っただけの選手が「スーパー」まで受け継いでしまうのには違和感がある(スーパーフェザー級で内山高志に勝ったコラレスなど)。そのスーパー王者と正規王者の統一戦が組まれなかったことが、タイトルが2つに分かれたままの大きな原因だ。井上が5月にマクドネルを破ったとしても、同じ団体にもう1人世界王者がいる状況では何だかスッキリしない。

 スッキリしないのはWBA世界ミドル級王者の村田諒太(帝拳)も同じだ。スーパー王者にWBCとIBFの王者でもあるゴロフキン(カザフスタン)がいるからだが、ゴロフキンがカネロ・アルバレス(メキシコ)との再戦が最優先されるなどボクシング界にとって特別な存在という理由がある。そして、もっとスッキリしないのがライトフライ級のWBA&IBF統一王者・田口良一(ワタナベ)だろう。昨年の大みそかにIBF王者メリンド(フィリピン)を破って王座を吸収した田口を、WBAは「統一王者」に認定。正規王座が空位になったことを受け、3月18日に小西伶弥(真正)とカニサレス(ベネズエラ)が決定戦を行うことになった。田口としては階級最強を目指して統一戦に臨み、せっかく世界王者を1人減らしたのに、逆に1人増えてしまうことになる。

 田口には7度防衛中のWBA王座を優先して保持していきたい意向があり、今後はIBF王座を返上する可能性がある。その場合、WBA王座は「スーパー王者」に変わると予想されるが、小西が勝って王者となっていたら、バンタム級の英国勢と同じように、国内で同じ団体の同階級に「スーパー」と「正規」の世界王者が2人存在する奇妙な状況となる。自分自身で防衛を重ねてスーパー王者になった者としては、今さら正規王座を獲得するメリットがないため、統一戦には乗り気ではないだろうが…。(専門委員・中出 健太郎)

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2018年3月1日のニュース