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ボクシング「年間最高試合賞」の在り方は…期待したい国内での名勝負

[ 2018年2月13日 11:40 ]

ボクシング年間優秀選手表彰式に集合した(前列左から)京太郎、比嘉、田口、村田、井上尚弥、木村、拳四朗、藤岡(後列左から)下田氏、内山氏、三浦氏、小関氏
Photo By スポニチ

 昨年12月に会った時よりも顔が引き締まっていた。子供の小学校入学に合わせ、3月中旬に東京から故郷・秋田へ移るのだという。今後は正式に決まっていないが、かつて夢中になったバス釣りなど趣味にも時間を割けそうだと話した。

 9日に都内で開かれたプロボクシングの2017年度年間表彰式に元WBC世界スーパーフェザー級王者の三浦隆司氏が出席していた。引退した元世界王者として特別賞を受賞したのだが、昨年1月28日、米カリフォルニア州でミゲル・ローマン(メキシコ)に12回KO勝ちしたWBC同級挑戦者決定戦が年間最高試合賞(世界戦以外)にも選出されていた。TKOで逆転負けしたものの、15年11月のフランシスコ・バルガス(メキシコ)戦も年間最高試合賞(世界戦)に選ばれており、「年間最高」は2年ぶり2度目。今回は勝っての受賞ですね、と水を向けると「それがうれしい」とほほえんだ。

 劣勢の展開を後半にひっくり返し、10回に左ボディーアッパーでダウンを奪ってから3度倒した試合はまさに痛快。受賞者を決める記者投票の前から「この部門は三浦―ローマンで決まり」と断言する記者もおり、実際に満票36票のうち半数の18票を獲得した。2番目に票を得たのが東洋太平洋スーパーバンタム級タイトルマッチ、大竹秀典(金子)―丸田陽七太(森岡)の4票。支持は圧倒的だった。

 年間最高試合賞は選手表彰が始まった1949年から「該当試合なし」の年がない。具志堅用高が世界王者時に5年連続で受賞したこともある。世界タイトルマッチの数が少なかった時代には日本タイトルマッチや東洋タイトルマッチなどからも選出されていたが、世界王座認定団体や世界王者が増えた最近では世界戦がほとんど。日本タイトルマッチが選ばれたのは98年の畑山隆則―コウジ有沢戦が最後だ。

 受賞が世界戦に偏ってしまうため、年間最高試合賞は14年から「世界戦」と「東洋太平洋・日本」の2部門に分けて選ばれるようになり、16年には「世界戦」と「世界戦以外」になった。16年の世界戦以外の年間最高試合賞は、米カリフォルニア州で行われた亀海喜寛(帝拳)―ヘスス・ソト・カラス(メキシコ)のノンタイトル戦。17年は三浦―ローマン戦だから2年連続で海外で行われた試合が選出され、世界戦以外の国内試合は2年続けて賞と無縁だったことになる。

 ノミネートの段階では年間最高試合賞に「国内試合」部門も設けてはどうかという意見も出た。世界挑戦者決定戦など海外で高いレベルの試合に臨む選手が増えており、このままでは日本タイトルマッチなどが表彰される可能性が低くなる一方だからだ。ただし、1試合を選ぶからこそ「年間最高」なのであり、部門ごとに3つも表彰していては価値が下がる上に、毎年のように規定を変えるのも混乱を招くとして見送られた。後に世界王者となる選手の“出世試合”と語り継がれるような、国内での名勝負が減っているのは寂しい。2018年度こそ、国内の試合が「年間最高」を受賞するのを期待したい。 (専門委員・中出 健太郎)

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2018年2月13日のニュース