トピック多かった17年ボクシング界 評価したい統一王者・田口
「新語・流行語大賞」や「今年の漢字」など、12月は1年を総括するイベントが目白押しだった。スポーツのトップ選手を集めた表彰式も多く開かれた。だが、ボクシングは「大みそか興行」までが1年なので、年内に総括ができない。年間表彰選手のノミネートは年明けに行われるし、表彰式の開催は2月。その頃には既に、新年1発目の日本タイトルマッチが終わっていたりする。
1月になり、ようやく2017年の振り返りが可能となった。激動の1年だったと改めて思う。
<新たに誕生した世界王者>福原辰弥(WBOミニマム)、久保隼(WBAスーパーバンタム)、拳四朗(WBCライトフライ)、比嘉大吾(WBCフライ)、京口紘人(IBFミニマム)、木村翔(WBOフライ)、山中竜也(WBOミニマム)、岩佐亮祐(IBFスーパーバンタム)、村田諒太(WBAミドル)、尾川堅一(IBFスーパーフェザー)と実に10人。2011年の5人を大幅に更新する年間最多記録だ。その中で福原と久保が、初防衛に失敗して王座から陥落した。
<落日>内山高志、三浦隆司、井岡一翔ら一時代を築いた世界王者たちがグローブをつるした。16年末に大金星で戴冠した小国以載も岩佐との初防衛戦に敗れて引退。内山に代わり「具志堅超え」が期待された山中慎介も初黒星を喫し、WBCバンタム級王座の連続防衛は12でストップ。セコンドによる早めのストップが議論を呼び、新王者ネリのドーピング違反が判明しながらWBCは処分なしの大甘裁定と後味も悪かった。WBOライトフライ級王者・田中恒成が試合で両目の眼窩底骨折を負い、WBA王者・田口良一との統一戦が流れたのも“悪いニュース”の1つだろう。
<快挙>新王者では五輪金メダリストの村田が日本人史上2人目のミドル級制覇を達成。不可解な判定を受けての再戦というドラマもあり、大きな話題となった。前王者を6度倒して世界を獲った比嘉はデビューから14試合連続KOで日本記録に王手。比嘉と同じ5月に世界王者となった拳四朗は年内に2度も防衛に成功した。京口は年間4試合戦い、東洋太平洋王座獲得→初防衛→デビューから1年3カ月の最速記録で世界王者→TKOで初防衛と精力的だった。木村と尾川は敵地での戴冠で、木村は五輪2連覇の中国の英雄を撃破する番狂わせを起こした上に、大みそかにはTKO勝ちで初防衛に成功。尾川は激戦のスーパーフェザー級王座を聖地・ラスベガスで獲得と、こちらも価値が高かった。
<充実>WBOスーパーフライ級王者・井上尚弥は全て圧勝で3連続KO防衛。9月に米デビューを果たし、動向が海外でも報じられるなど「Monster」の名は世界に知れ渡った。WBAライトフライ級王者・田口は指名挑戦者をTKOで撃退し、大みそかにはIBF王者との統一戦に年間最高試合レベルの激闘で勝利。国内3人目の統一王者となり、日本人初のWBA統一王者に昇格し、米専門誌リングの認定ベルト獲得も決まった。王座を返上した田中も、年間最高試合候補に挙がるような内容で指名試合をクリアした。
世界王者に限定してもトピックが多すぎて、表彰項目がいくつあっても足りない。記者投票で決まる年間MVPも複数を選びたいほど。相手との実力差がありすぎたとはいえ、井上は圧巻の世界戦3KO勝利。村田のミドル級世界王座獲得は、今後続く日本人が出てくるか分からないほどの歴史的快挙だ。比嘉や木村にもMVP候補の資格がある。ただ個人的には、軽量級で年間2勝ながら2試合とも実力伯仲の打ち合いを演じ、防衛回数を7に伸ばした統一王者・田口を評価したい。激動の1年を最高の気分で締めくくってくれた感謝も込めて。(専門委員・中出 健太郎)
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