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内山去り、井岡は引退危機…ボクシング年末興行に転機

[ 2017年11月27日 11:40 ]

世界戦の会見前、大橋会長(右)が手にする資料に見入る井上尚弥
Photo By スポニチ

 年末恒例のボクシング興行のカードがようやく出そろった。今年は12月30日に横浜文化体育館で大橋ジム主催のダブル世界戦、大みそかに東京・大田区総合体育館でワタナベジム主催のトリプル戦だ。チケットの販売を考慮すると、遅くとも2カ月前には発表したいところだったが、12月30日のカードが正式発表されたのは1カ月半前の11月16日。大みそかは11月17日と21日の2度に分けて会見が開かれており、例年に比べてかなり遅かった。

 フジテレビが中継する12月30日はWBO世界スーパーフライ級王者・井上尚弥(大橋)の7度目の防衛戦に加え、当初は元東洋太平洋同級王者・松本亮(同)のスーパーバンタム級での世界挑戦が予定されていた。だが、松本はケガをしたため断念。同じフジテレビの放送で10月22日にWBC世界ライトフライ級王座の初防衛に成功したばかりの拳四朗(BMB)に、急きょ出番が回ってきた。拳四朗が話を聞いたのは、発表の10日前。挑戦者ペドロサ(パナマ)の詳細も知らないまま会見に出席するドタバタぶりだった。

 井上尚はIBF世界スーパーフライ級王者アンカハス(フィリピン)が英国での試合を優先したため、年末の統一戦はお預け。いつもどおり相手選びに苦労し、ランキング7位のボワイヨ(フランス)が挑戦の意思を示したことで防衛戦が成立した。来年2月24日に米国で開かれる興行「SUPERFLY2」への出場を熱望しており、試合間隔からすれば年末はスキップしたいところだが、本人は両方とも出る気満々。規格外の強さから両立が可能とは言え、普通なら難しいスケジュールだろう。

 大みそかは今年、テレビ東京がボクシング中継を断念した。昨年まで6年連続出場していた内山高志(ワタナベ)の引退が影響したのは間違いない。単独中継となったTBSも、看板選手の井岡一翔(井岡)が引退危機(夏頃から情報は知れ渡っていた)&王座返上とあってマッチメークには苦戦した。目玉カードのはずだったWBO世界ライトフライ級王者・田中恒成(畑中)とWBA同級王者・田口良一(ワタナベ)の統一戦は、9月の試合で田中が両目の眼窩(か)底骨折を負って白紙に。試合翌日、同局関係者は「一翔(井岡)が大みそかに出られないかな」と嘆いていた。

 しかし、代わりに田口とIBF同級王者メリンド(フィリピン)の王座統一戦が実現したのは大きく、ファンを喜ばせている。田中と田口の対決も魅力的だが、八重樫東(大橋)に1回TKO勝ちしたメリンドを破っての王座統一なら田口の評価も高まるはずだ。これにIBF世界ミニマム級王者・京口紘人(ワタナベ)―ブイトラゴ(ニカラグア)、WBO世界フライ級王者・木村翔(青木)―元WBC同級王者・五十嵐俊幸(帝拳)という、いずれも指名試合&初防衛戦の2試合が加わり、大みそか興行としての体裁が整った。

 年末興行は出場選手の年間の試合時期が固定されるため、井上尚のような海外進出を狙う王者には障害となりやすい。集中開催のため、メーンイベンター以外は中継や紙面での扱いも小さくなりがちだ。同時間帯に2つのテレビ局がボクシングを中継し、視聴率で“共倒れ”ということもあった。一方で今年は、田口や木村らこれまで主役ではなかった世界王者たちが全国区になるチャンスをつかんでおり、テレビ中継はありがたいとも言える。内山が去り、井岡も去就不透明な状況で転機を迎えている年末興行が、来年以降どうなるのか。紆余(うよ)曲折を経て開催にこぎつけた今年の成否が、見極めの指標となりそうだ。(専門委員・中出 健太郎)

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2017年11月27日のニュース