カトパン突撃!ボクシング松本圭佑 家族が支える折れない王者の心
【カトパン突撃!東京五輪伝説の胎動】 五輪メダル候補の呼び声高いアマチュアボクサー松本圭佑(18、大橋ジム)。父親は3階級制覇の元世界王者・八重樫東(34)らを育てた名トレーナーの松本好二氏(48)だ。小学3年から始まった父子鷹の挑戦は2020年にクライマックスを迎える。家族思いの好青年ボクサーはいかにして出来上がったのか。フリーアナウンサー加藤綾子(32)がパンチの利いたクロストークで本音に迫ります!
◆八重樫&尚弥から刺激
――ボクシング界でも注目の父子鷹。東京五輪まであと3年ですが目標である一番輝いているメダルに向けて、ここからが大事な時期になりますね。
圭佑「練習してキャリア、気持ちの部分を鍛えて完成させたい。3年間急いで積み上げたいですね」
――8月のインターハイのバンタム級決勝では堤駿斗選手(習志野高)に判定負け。やはりライバルの存在は大きい?
圭佑「ライバルがいて良かった。今は上を目指すために強くなるべき段階。後々生きてくればと思います」
――多くの世界王者を育てたお父さんから見るとどうですか?
好二氏「実力的には接近している。この子はまだ成長過程で伸びしろがあるので楽しみ。長所はボクよりも真面目なところ(笑い)」
――お父さんの指導はどうですか?
圭佑「トレーナーとして世界王者を教えているのを見てきました。ボクの誇り。言われたことは素直に聞き入れられますね」
――なんて素直な息子さんなんですか(笑い)。
好二氏「いいのか悪いのか反抗期もなかった。だからって無理やり、反抗期にさせるわけにもいかないしね(笑い)」
――お父さんは反抗期はありました?
好二氏「めちゃくちゃありましたね(笑い)」
――プロとアマの違いは大きいですか。
好二氏「アマは2分3回。五輪でも3分3回。ルールも採点方法も違います。短距離とマラソンくらいの違いがある」
――大橋ジムは八重樫東選手や井上尚弥選手ら世界王者がそばで練習している環境ですね。
圭佑「めちゃくちゃ刺激的です。2人とも大きな存在なのに練習にこまめに取り組むし優しい。八重樫さんは“けいちゃん、けいちゃん”って気安く声を掛けてくれます」
――練習内容は?
圭佑「朝5時半に起きて6時からロードワーク。1時間ほど走る。学校終わりに2時間ほどジムで練習します。雨が降ったら走らない。火曜日は坂道と階段ダッシュを2時間やって追い込みます」
好二氏「現役時代、ボクは走りたくなくて夢の中まで雨が降ってましたよ(笑い)」
――3度世界戦に挑んだお父さんと比較されることは?
圭佑「始めた頃から気にしてない。自分のボクシングがありますし夢に向かっていければいいかな」
――お父さんの世界戦の映像を見たことは?
圭佑「見ると悔しい。ビデオを見ても過去は変わらないですから。お父さんの姿を目に焼き付けて、輝かしい舞台で自分が王者になって恩返ししたい」
◆きっかけは脱毛症 強くあるために
――小学3年から始めたボクシングの何が魅力ですか。
圭佑「小さい頃に始めたので何が何だか分からないままでした。特別怖いと思ったこともない。勝ち名乗りを受けた時や、相手とパンチが交錯する瞬間に会場がどよめいたりするとうれしくなる」
――パンチが当たった時の感覚は凄い?
圭佑「残酷ですけど小4の時にスパーリング大会で左ボディーを打ったら相手がうずくまった。本当に気持ち良かった。それまでは戦うなんて、とんでもない感じでした」
――なぜボクシングをすることに?
好二氏「実はこの子は脱毛症なんです。小学校に入学した時に1カ月ほどで毛が抜け落ちて。このまま、髪の毛がないまま生きていくかもしれない。サッカーも野球も塾もイヤと言うし、ボクに教えられるのはボクシングしかないので、小3の夏休みからやるようになった。子供の世界はちょっと強いと一目置かれるじゃないですか」
――圭佑選手がいつもバンダナをしていた印象があったのですが、そういうことだったんですね。
圭佑「眉毛も抜けて腕や足もツルツル。小学校では帽子で隠してました。先輩や後輩には面白がって帽子を取る人も。でも友達が皆で守ってくれました。いい友達がいたからこそ今もボクシングを頑張れる。心のよりどころである父親もいるので続けられました」
――いつ頃からバンダナを着けなくなったんですか。
圭佑「小学校では普段は着けていたんですけど、中学でボクシングの練習以外は外すようにしました。今は(症状が)よくなったこともあって、高校で全部取りました」
好二氏「母親は“中学に行ったら取りなさい!”って言ってましたね。ボクは“イヤだったら取らなくていいよ”と言っていた。そこは自分で決めないとね。女親は強いですよ(笑い)」
◆犬とともに!?てっぺん獲れる宿命の名前
――験担ぎはある?
圭佑「ボクは計量の時は左足からです。グローブも左手です。これは父親の名残り。左手から入れてもらってるうちに左手になった」
――なるほど、親子だと生活を通して癖まで似てくるんですね。でも、名前には共通性はないですよね。
好二氏「実は現役時代、ボクはヨネクラジムの米倉健司会長にお世話になっていたんですけど“王者になるには、おまえの字画は悪い。ユウサクかケイスケに名前を変えろ!”と言われ続けていたんです」
――それで「ケイスケ」と名付けたんですか?
好二氏「そうです。ただ、最初に犬を飼ったんでユウサクにした。会長は2、3分前のことを忘れるような方なんですけど、いつも“おい、ユウサクはいくつになった?”と聞く。“会長…それは犬です”って返すんですけどね(笑い)」
――圭佑君はそんな名前についてはどう思いますか。
圭佑「普通じゃないエピソードなんでうれしい。この名前でボクシングをできることになって良かったと思います」
◆松本 圭佑(まつもと・けいすけ)1999年(平11)7月17日、神奈川県生まれの18歳。小5でU―15で優勝し、5連覇を果たす。横浜みなと総合高に入学後、16年に全国高校選抜で優勝。インターハイでは3年連続で準優勝。1メートル75。
◆松本 好二(まつもと・こうじ=本名・弘司)1969年(昭44)9月27日、神奈川県生まれの48歳。96年に東洋太平洋フェザー級王座を獲得。97年のWBA世界Sフェザー級王者・崔龍洙戦など3度の世界戦を経験。トレーナーとしてエディ・タウンゼント賞受賞。
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