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Dangerous Japanese Worrior―WBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチ

[ 2017年7月19日 09:00 ]

バーナード・ホプキンス(右)が注目する中、計量後ににらみ合う三浦とベルチェルト
Photo By スポニチ

 【中出健太郎の血まみれ生活】カンペをそんなに見るなよ。思わずつぶやいてしまうほど、オスカー・デラホーヤは何度も下を向いた。三浦隆司(帝拳)が出場した、米ロサンゼルスでのボクシングWBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチの公式記者会見。かつての6階級制覇王者で、現ゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)のCEOが会見する姿を撮影しようとしたが、正面を向いている瞬間が短く、何度もシャッターを押すはめになった。コメントは何度もつっかえるし、ちょっとガッカリした。

 カッコイイ、と思ったのは元4団体統一世界ミドル級王者バーナード・ホプキンスだ。デラホーヤらと激闘を繰り広げ、49歳で世界王座奪取と防衛の最年長記録を樹立した「The Executioner(死刑執行人)」。51歳だった昨年12月、現役最後の試合で初のKO負けを喫した相手が、三浦の前座で出場したジョー・スミスJr(米国)で、会場も同じ「ザ・フォーラム」。現在はGBPのパートナーを務めるホプキンスは会見で、自分が敗れた“自虐ネタ”を交えながらスミスをPR。興行を盛り上げようとする姿に、大人の余裕と貫禄を感じた(スミスは負けたけど)。

 三浦が会見で「Mexican Executioner(メキシカン処刑人)」と紹介されたのは、その場にホプキンスがいたからだろう。メキシコ人にとっては同胞をリングに沈めてきた憎き相手だが、常に前へ出る激しいファイトスタイルでリスペクトすべき存在。高い能力を持ちながら挑発パフォーマンスやダーティーなファイトで完璧なヒール(悪役)を演じ、キャリア晩年に尊敬を集めるようになったホプキンスと、かたき役としての姿を重ね合わせたのかもしれない(三浦選手本人は実直な方で、決してダーティーではありません、ハイ)。

 三浦は王者ベルチェルト(メキシコ)に大差の0―3判定で敗れ、王座奪回はならなかった。必殺の“ボンバーレフト”は空転したが、大きなフックを振り回すたびにメキシコ系住民の多い会場はどよめき、左ストレートが王者の顔面を捉えると悲鳴に似た叫びが上がり、ベルチェルトを激励する「メヒコ!」コールが響いた。ダウンを奪うなどの見せ場はつくれなかったが、観客は「我々のチャンピオンは勝ったし、挑戦者もなかなか面白かった」と満足していたように見えた。WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者ジェスレル・コラレス(パナマ)が最後はバッティングで試合を“終わらせ”、メキシコ人選手に負傷判定勝ちを収めた揚げ句、観客席へ投げキスをするヒールぶりで盛大なブーイングを浴びたセミファイナルとは対照的だった。

 ヒールとしては面白いが、しょっぱい試合内容(ダウンを奪い返した底力には感心したが)からすると、コラレスは王者でなくなった瞬間にプロモーターから必要とされなくなりそう。逆に、激闘型の三浦はタレント豊富な現在のスーパーフェザー級戦線でも“使い勝手がいい”と今後も声がかかりそうな気がする。ただ、そんな使われ方をよしとする三浦ではないだろう。かつてフロイド・メイウェザー(米国)らと戦い、亀海喜寛(帝拳)とも打ち合いを演じた36歳の元4階級制覇王者、ロバート・ゲレロ(米国)は三浦と同じ日に米ニューヨーク州でTKO負けを喫し、ついに引退を表明した。対ベルチェルトで完敗を認めた三浦は、どうするのだろうか。 (専門委員)

 ◆中出 健太郎(なかで・けんたろう) 2月に50代へ突入。スポニチ入社後はラグビー、サッカー、ボクシング、陸上などを担当。今回は海に近いロサンゼルス空港周辺での取材で、海風が吹きつける現地の朝晩が予想外に涼しくてビックリ。試合会場の「ザ・フォーラム」は初めてで、ロゴ入りTシャツを購入してしまうなどちょっと興奮したが、場内の空調が効きすぎてブルブル。半袖しか持って行かなかったのは失敗でした。

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2017年7月19日のニュース