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井上尚弥 松坂&ダル超え評価の米国デビュー

[ 2017年6月24日 10:30 ]

井上尚弥
Photo By スポニチ

 まだ日本でしか活動していないにも関わらず、本場で高い評価を受けて米国デビューへの道を歩む。野球で言えば松坂大輔、ダルビッシュ、田中将大らが当てはまり、大谷翔平が“予備軍”といったところか。9月9日(日本時間同10日)に待望の米デビューが決まったボクシングのWBO世界スーパーフライ級王者・井上尚弥(24=大橋)も同じケースだが、渡米前の現地の評価では松坂やダルビッシュより上かもしれない。

 井上尚の出場が決まった興業のタイトルは「SUPERFLY」。今年3月にプロ初黒星を喫するまでパウンド・フォー・パウンド(PFP、全階級を通じて最強を決めるランキング)の1位に君臨した元4階級制覇王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア、帝拳)、ゴンサレスを破ったWBC王者シーサケット・ソールンビサイ(タイ)、元世界王者のカルロス・クアドラス(メキシコ)にファン・フランシスコ・エストラーダ(同)とスーパーフライ級の世界トップクラスが集結する興業で、井上尚はセミファイナルでWBO世界バンタム級7位のアントニオ・ニエベス(30=米国)を相手に6度目の防衛戦を行う。会場は未発表だが、米ロサンゼルス郊外のスタブハブ・センターかラスベガスが予定されており、米ケーブルテレビ最大手HBOによって全米に中継される。

 米国では試合がHBOで中継されることが一流ボクサーの証明であり、従来の日本人なら地道な活動が現地で評価されるか、運良く名王者の挑戦者に選ばれるしか試合に出るすべはなかった。米デビュー戦で「HBOのセミファイナル」はまさに異例の好待遇で、井上尚が米メディアやボクシング関係者から「直接見たい」と期待されているからこその抜てきだ。世界を代表するプロモーターの帝拳ジム・本田明彦会長も「この試合が終わればPFPのベスト10にすぐ入る。それ(PFP)を決める人たちが見たいと言っている。見たらみんなビックリするはず」と話すほどだ。

 当初、挑戦者候補としては双子のマックウィリアムズとマックジョーのアローヨ兄弟(プエルトリコ)の名前が挙がっていた。2人は米国でも知名度があり、マックウィリアムズとの対戦を聞かされた井上尚も「やりたい」と即答したが、発表直前に現地プロモーターから理由もなく挑戦者変更が伝えられたという。「アローヨをプッシュしたけど、最後の最後で代わってしまった」と残念そうだったが、ニエベスはバンタム級の選手でリーチも1メートル74と長い。“顔見せ”の意味合いが強い米デビュー戦で1階級上の大きな、しかもKO負けの経験がない選手を倒す方がアピールになるかもしれない。

 米デビュー戦は問題なくクリアするはずだ。関係者も評価をさらに上げるはずで、来年以降はビッグマッチが組まれる可能性も高い。ただ、井上尚に求められるのは強さだけではない。軽量級でもHBO中継のメインを張れることを証明したゴンサレスは、米国での試合に母国ニカラグアから約3000人の応援団が駆けつけるという。6階級を制覇した“アジアの英雄”マニー・パッキャオ(フィリピン)になると、会場の半分以上がフィリピン系の人々で埋まる。国全体を挙げて米国に“ブーム”を起こしているわけだ。今後も「年3回の試合のうち1回は米国でやりたい」と意欲的な井上尚に期待されるのは、本場で野茂英雄レベルのインパクトを残すことだろう。(専門委員・中出 健太郎)

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2017年7月1日のニュース