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統一戦の前にやるべきこと――田口、V6戦へ

[ 2017年6月24日 10:30 ]

世界初挑戦する京口紘人(右)とV6戦に臨む田口良一
Photo By スポニチ

 【中出健太郎の血まみれ生活】ボクシング世界王座の国内最多防衛記録は、言うまでもなく元WBA世界ライトフライ級王者・具志堅用高(協栄)の13回。では、同じライトフライ級で次に防衛回数の多い日本人世界王者は?答えは元WBA王者の渡嘉敷勝男(協栄)と、現WBA王者・田口良一(ワタナベ)の5回だ。つまり、田口は7月23日に東京・大田区総合体育館で行われるロベルト・バレラ(コロンビア)戦で6度目の防衛に成功すれば、ライトフライ級の日本人世界王者計14人のうち、具志堅に次いで単独2位の防衛回数となる。

 5度の防衛成功にもかかわらず、田口の一般への知名度は高くない。控えめながら素直な性格も、KOを狙って前へ出続けるファイトスタイルにも好感を持てるが、他の日本人世界王者に比べると地味に映ってしまう。6度目の防衛戦も、IBF世界ミニマム級タイトルマッチで世界初挑戦するジムの後輩・京口紘人にメインを譲り、セミファイナルでの登場だ。最軽量級なのにデビューからKOを連発し、口も達者な京口には華があり、テレビ関係者が「センセーショナルな試合を期待している」と言うのも分かるのだが、会見で「試合順は気にしない。ジムの意向なので」と話す姿が何とも気の毒だった。

 地味な扱いをされるのは、ジムに内山高志(元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者)という偉大な先輩がいて、その周囲に控える立場だったこともある。だが、世界的に評価の高い挑戦者を相手に、インパクトがある戦いを見せていないことも理由だろう。王座を奪取した14年12月のアルベルト・ロセル(ペルー)戦は2度ダウンを奪う見事な戦いぶりだったが、判定まで粘られた。防衛戦は指名試合が宮崎亮(井岡)との日本人対決で、しかも宮崎の出来が悪く、他の挑戦者はおしなべてランキングが低かった。3位のカルロス・カニサレス(ベネズエラ)を迎えた前戦も引き分け防衛で、強さを誇示できなかった。

 評価を変えるには、本人同士が熱望しているWBO世界ライトフライ級王者・田中恒成(畑中)との統一戦に勝つことが分かりやすい。V6戦の発表会見でも「いい内容で勝って、田中選手と統一戦をやりたい。勝てば次にやれるものと思っている」と希望を口にし、「(田中は)成長していて、ミニマム級の頃より強くなっている。そんな選手に勝てたら、自分のボクシング人生は成功だと思う」とまで言い切った。実は、13年4月に決定戦で日本ライトフライ級王座を獲得した際にも、試合前に「王者になったら次は井上尚弥(大橋)とやるかも」と打診されていたそうで(初防衛戦で井上に判定負けして陥落)、「今回はそれに近いものがある。それ(1つ先の試合)がモチベーションになったりする」と明かした。

 個人的には、統一戦に進む前にバレラ戦でインパクトを残すべきと考えるし、田口にとってベストバウトになる可能性があるとも期待している。従来の1年に3度防衛戦のペースではなく、前戦から6カ月以上空いて体はリフレッシュできており、調整に苦労する冬の試合でもなくコンディションは良いはず。前戦で下げた評価を取り戻す&次戦で統一戦の可能性など、モチベーションにも事欠かない。

 指名挑戦者のバレラは大物との対戦経験はないが、田口が引き分けたカニサレスに判定負けした1敗のみのランキング1位。「劣勢をはね返してKO勝ちする勝負強さがある」と田口は評しており、望むような打撃戦になりそうだ。田中も5月に全勝のアンヘル・アコスタ(プエルトリコ)を退けて指名試合をクリアしたばかり。お互いの評価が高まったところで激突すれば、統一戦は「ライトフライ級最強決定戦」の価値を帯びる。 (専門委員)

 ◆中出 健太郎(なかで・けんたろう) 2月に50代へ突入。スポニチ入社後はラグビー、サッカー、ボクシング、陸上などを担当。田口は遊軍時代に世界王座を奪取した試合を執筆し、ボクシング担当復帰後も取材を継続。テレビ局が田口につけた愛称「ツヨカワイイ」は、30歳を超えたボクサーにはふさわしくないと思うし、本人も嫌がっている節があるので、新たなニックネームがつけられることを期待している。

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2017年6月24日のニュース