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久保 世界王者!デビュー12連勝“長谷川2世”、先輩の前で載冠

[ 2017年4月10日 05:30 ]

WBA世界スーパーバンタム級タイトルマッチ   ○同級8位・久保隼 11回5秒TKO 王者ネオマール・セルメニョ● ( 2017年4月9日    エディオンアリーナ大阪 )

3回、王者セルメニョ(左)を攻める久保隼
Photo By 共同

 ボクシングのWBA世界スーパーバンタム級8位の挑戦者・久保隼(27=真正)が、王者ネオマール・セルメニョ(37=ベネズエラ)に11回5秒でTK0勝ちした。久保は7回にダウンを喫したが、粘り強く有効打を重ね、11回開始直後、王者が棄権の意思を示した。同門で同じサウスポーの元世界3階級制覇王者、長谷川穂積氏が見守る中、デビュー12連勝で世界王者に輝き、日本のジムに所属する男子の世界王者は10人となった。

 久保が高々と拳を上げた。11回。体力を消耗し切ったチャンピオンは立ち上がろうとせず、赤コーナーでグローブを外して棄権。予想外の幕切れで新王者が誕生した。序盤から久保の左ボディーがヒット。7回、カウンターを狙われてダウンを喫するも、8回からは再び足を使った。次第にバテてきた王者とは対照的に挑戦者のスタミナは衰えず、打ち続けて戦意を喪失させた。

 「長谷川さんのおかげですね。弱気な顔をするな、と。打ち合いのあと、気迫で負けるなと言われていた」。試合は一進一退で10回までの判定は1―2と僅差で劣勢だったが、最後は気迫が相手を上回った。

 昨年、現役を引退した元3階級制覇王者、長谷川氏は同じジムに所属し、同じサウスポー、そして同じ階級だ。その大先輩が昨年9月、ウーゴ・ルイスに勝って35歳9カ月の国内最年長記録を更新して世界王者に返り咲いたとき、周囲は「奇跡」と言った。しかし、久保は「奇跡じゃない。練習通りでした」と言い切る。この復活劇で見せた気迫を、しっかり継承した。

 長谷川イズムは、7回にプロ初のダウンを右カウンターで奪われる大ピンチも救った。「“カウント8までは休んでおけ”と言われていた。それが頭にあって冷静になれた」。熱くてクールな先輩に最敬礼だ。

 山あり谷ありの競技人生だった。強豪の南京都高(現京都広学館高)を卒業し、同校の指導者になることを期待されて東洋大に進学。しかし、指導者としての資質に疑問を感じ、3年の冬にボクシング部をやめ、故郷の京都に帰った。

 しかし、父・憲次郎さん(51)は退部に激怒。実家を追い出されて公園で1週間のホームレス体験もした。結局、京都市内の祖母宅で1カ月、居候している時、山下会長から声が掛かって競技を再開できた。この日は迷惑をかけた両親も駆けつけて祝福。リング上で「育ててくれてありがとう」と感謝の言葉も口にできた。

 久保にはベルト以外の目標がある。「これが挑戦権」と、IBF世界同級王者の小国以載(28=角海老宝石)との試合を熱望。そのためにも、まずは指名試合のクリアが必要。まだまだ、夢半ばだ。

 ▼長谷川穂積氏 チャンピオン、おめでとう。まだまだ課題も残っているけどしばらくゆっくり休んでチャンピオンライフを満喫してください。ダウンの場面は課題が残ったけど、序盤は自分ペースでいいボクシングができたと思います。(元3階級制覇世界王者で久保のジムの先輩)

 ▼井岡 一翔(WBA世界フライ級王者) ダウンしても、そこから自分のペースに戻していた。僕も2週間後にここで試合がある(23日にV5戦)ので刺激になります。

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