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八重樫らしくない?美顔勝ち いつもボコボコで勝つ父ちゃんが…

[ 2016年12月31日 05:30 ]

IBF世界ライトフライ級タイトルマッチ   ○王者・八重樫東 12回2分13秒TKO ミニマム級8位サマートレック・ゴーキャットジム● ( 2016年12月30日    有明コロシアム )

防衛に成功した八重樫は(左から)長女・志のぶちゃん、長男・圭太郎君(同2人目)、次女・一永ちゃん(同4人目)の祝福に笑顔を見せる
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 プロアマ通じて100戦目のベテランに7カ月のブランクは関係なかった。八重樫はむしろこれまで以上に冷静だった。

 序盤は前に出てくる小柄なサマートレックの攻撃を、足を使ってさばいた。「のみ込もうと思えば、のみ込めたかもしれないけれど、それはしたくなかった」。顔面を腫らしても前に出ていく“激闘王”があえて打ち合いを避けて、動いて勝機を探った。膠着(こうちゃく)状態が続くと、7回からは足を止めて打ち合う場面をつくった。徐々に圧力を強め、最終12回には一気に勝負に出た。右ストレート、そして左ボディー。コーナーに追い詰めて連打に次ぐ連打を浴びせた。サマートレックがふらついたところで、レフェリーがストップ。観客席から「お父ちゃん、頑張れー」と喉をからして声援を送り続けた長女・志のぶちゃん(6)ら3人の子供たちの期待にも応え、「しっかり倒せてよかった」とホッと息をついた。

 5月の初防衛戦の前に左肩を負傷した。「肩甲下筋損傷、関節唇損傷」で全治3カ月。防衛には何とか成功したが、9月に予定された試合は見送るしかなかった。その間に「肩を守るトレーニングをした。筋肉量を増やした」。かつて大相撲の横綱・千代の富士が脱臼癖のある肩を守るために筋肉のよろいをまとったように、徹底して肩周りを鍛えた。おかげで痛みは消え、威力の増した左ボディーも効かせることができた。

 対戦相手がなかなか決まらず、サマートレック戦が決まったのは今月2日。短い準備期間という逆境も乗り越えての2度目の防衛成功だ。次戦は暫定王者メリンド(フィリピン)との統一戦が有力。「動くことはできたけれど、攻めあぐねて、最後は力業だった。ちゃんと(ボクシングを)やりたかった。まだまだ甘いな」。動いて崩す新たなスタイルの片りんを見せた復帰戦勝利。内容に満足はしていないが、いつもよりきれいな試合後の顔が33歳の成長を物語っていた。

 ▼浜田剛史氏 ベテランの駆け引きと正直なボクシングの差が出た。序盤のペースの取り合いから4、5回、サマートレックが出てきたが、八重樫は付き合わずに外す。6回以降、今度は流れをつかんで攻めに転じ、最後はTKO勝利に結びつけた。百戦錬磨の八重樫らしい計算ずくの試合運びだった。

 ◆八重樫 東(やえがし・あきら)1983年(昭58)2月25日、岩手県北上市生まれの33歳。黒沢尻工―拓大。アマ70戦56勝14敗。05年3月プロデビュー。11年10月、WBAミニマム級王者ポンサワン(タイ)に10回TKO勝ちし、2度目の挑戦で世界王者。12年6月、WBC王者・井岡一翔との統一戦に判定負けして陥落。13年4月、WBCフライ級王者・五十嵐俊幸に判定勝ちして2階級制覇。14年9月、ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)に9回TKO負けで4度目の防衛に失敗。15年12月、IBFライトフライ級王者のメンドサ(メキシコ)に判定勝ちして3階級制覇。身長1メートル59・5、リーチ1メートル62の右ボクサーファイター。

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