内山の細かな気遣いに感心も…悲願実現へわがままを通してもいい

[ 2016年4月4日 09:50 ]

 「あ、そこに座っていると服が濡れますよ」。

 ワタナベジムのフロアに座り込んで取材していた記者に、WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者・内山高志が下に敷くマットをサッと差し出してきた。フロアに体重をかけていると、染みこんだ汗などがにじみ出てくるという。スパーリング後、腹筋運動中のチャンピオンに話を聞いていたのだが、細かな気遣いに感心させられた。

 36歳の落ち着きがなせるわざなのだろうが、内山は周囲をよく観察して気を配っている。ジムの隅にある用具がきちんと片付けられていないのを見るや、まずは自分で片付けてから周囲に注意を促す。ジムの入り口に人影が現れれば、来客用のスリッパがそろっているか目配りする。イベントの出演先から自ら車を運転して帰る途中、歩いて駅へ向かっている記者を見つけると、わざわざウインドーを下ろして取材の礼を述べる。今すぐにでも一般企業の営業職でトップの成績を取りそうな、義理人情に厚い常識人だ。

 そんな内山でさえ、公の場で「正直、モチベーションが下がった」とこぼしたのが、27日のトリプル世界戦(東京・大田区総合体育館)での対戦相手決定までの経緯だ。当初は念願の米国進出へ向け、27戦無敗の元WBAフェザー級スーパー王者ウォータース(ジャマイカ)との対戦交渉が順調と伝えられた。内山も「身体能力が高いウォータースと戦ったらどうなるか」と楽しみにしていたが、1月下旬に実現は厳しいとの情報が入り、続けてWBAから「スーパーフェザー級正規王者フォルトゥナ(ドミニカ共和国)と王座統一戦を行え」との指令が出た。

 フォルトゥナはウォータースに比べれば地味ながらテクニシャンとして知られ、内山も「技術のフォルトゥナとパワーのウォータースを連破すれば知名度が上がる」と前向きに捉えていた。しかし、「マネジャーがクセモノ」の噂どおり、フォルトゥナとの交渉も「ジムがつぶれるような高額ファイトマネーを要求された」(渡辺均会長)ために難航。暫定王者コラレス(パナマ)との統一戦を先に行うことでWBAの許可を得て、やっと相手が固まった。だが、コラレスは「インビジブル(透明人間)」の愛称を持つディフェンスの達人とはいえ、KO率が低く世界的には無名。内山とすれば相手の格が2段落ちた上に、結局はいつもと同じ会場での試合。これで張り切る人がいたら、それこそ聖人だ。

 内山が今回、コラレスを退ければ12度目の防衛に成功。次戦で防衛13回の元WBA世界ライトフライ級王者・具志堅用高氏に並び、その次で国内新記録の14連続防衛となる。内山の世界戦を中継してきたテレビ東京としては、記録更新を大みそかに国内の試合で実現させたいとみられ、11月に37歳となる内山が名前を売るために米国へ進出するなら秋頃のV13戦しかチャンスはない。普段の姿を見ている者としては、今回ばかりは怒りをコラレスへぶつけ、その後は悲願実現へわがままを通してもいいのではないかと思うのだが…。(記者コラム・中出 健太郎)

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