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一翔も井上も抜いた!恒成 日本人最速5戦目で世界王者

[ 2015年5月31日 05:30 ]

7R、イエドラス(右)に左フックを見舞う田中

WBO世界ミニマム級王座決定戦 ○同級2位・田中恒成 判定3―0 ●同級1位・フリアン・イエドラス

(5月30日 愛知・パークアリーナ小牧)
 WBO世界ミニマム級王座決定戦が30日、愛知県のパークアリーナ小牧であり、同級2位の田中恒成は同級1位のフリアン・イエドラスをスピードで圧倒し、12回判定3―0で破った。プロ5戦目での世界王座獲得は井上尚弥(大橋)の6戦目を抜いて国内最速記録となった。

 強心臓の田中は世界ベルトを巻いても淡々としていた。「普通どおりに試合をしたらベルトがやってきた。ただホントに疲れました。体力的にも気持ちの面でも」。歓喜の涙を流すこともなく、冷静に場内の喝采を浴びた。

 世界初挑戦は「凄いプレッシャーで緊張した」と言うものの、簡単に主導権を握った。ハンドスピードとフットワーク、両方の速さで圧倒。2回はガードを割って右ストレートを打ち抜き、グラつかせた。中盤からスタミナ不足で失速しかけたが、5回の右アッパーなど攻められれば必ず逆襲。ジャッジ2人が6点差をつける完勝だ。

 プロ転向5戦目で世界王座を獲得。尊敬する井上尚弥の6戦目を抜いて国内最速記録を樹立、日本人4人目の10代世界王者となった。「記録は気にしてなかった。この試合だけは“負けられない”という思いが強かった」

 物腰の柔らかい好青年ながら頑固な面もある。中京高で指導した石原英康氏(39)は「細かく言うと反発する。基本動作だけを教えてあとは自主性に任せた」と振り返る。元東洋太平洋王者である恩師の助言も、田中は議論して納得しなければ受け付けなかった。ジムでトレーナーを務める父・斉(ひとし)さんの勧めで小学生の頃から練習ノートを習慣とし常に考える癖をつけていた。「自分は頭でボクシングをやってます」。プロの現在も状況は同じ。元世界王者の畑中清詞会長(48)は「俺はモップ係や」と笑う。練習中はリング内に飛び散った汗を拭くだけ。めったに指示しない。「間違った方向にいけば修正するけど、そんなことはないから」。愛弟子の性格を熟知し、一歩引いた位置から見守る。

 父、中京高の恩師、そしてジム会長。理解ある“指導者”に囲まれ、のびのびと育てられた田中が素質を開花させたのは必然だった。

 ◆田中 恒成(たなか・こうせい)1995年(平7)6月15日、岐阜県多治見市出身の19歳。中京高―中京大。小5で競技を始め、高校4冠。アマ通算46勝5敗。高校3年だった13年夏の総体後に畑中ジムに入門、9月にプロテストB級合格。同年11月デビューから4連勝で東洋太平洋ミニマム級王座を獲得。1メートル63。右ボクサーファイター。

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