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井上 世界最速わずか8戦で2階級制覇 伝説王者を2回KO

[ 2014年12月31日 05:30 ]

<オマール・ナルバエス・井上尚弥>2R、猛ラッシュでKO勝利の井上尚弥

 WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチが30日、東京体育館で行われ、挑戦者の井上尚弥(21=大橋)が世界王座計27度防衛の伝説的な王者オマール・ナルバエス(39=アルゼンチン)から4度のダウンを奪い、2回KOで圧勝した。4月に獲得したWBC世界ライトフライ級王座を返上して2つ階級を上げて挑戦した日本の怪物は、ポール・ウェア(英国)の9戦目を抜き、世界最速8戦目での2階級制覇を達成した。

 あまりの強さが疑惑まで呼び起こした。試合後のリング上で、ナルバエス陣営は井上のグローブの細工を疑い「おかしい。見せろ」と要求した。問題ないと見るやバンデージまでチェック。ここにも不正がないことを確認すると、苦笑いして引き下がるしかなかった。

 異次元の強さだ。開始25秒。「最初に強いパンチを打ち込んで警戒させようと思った」。右ストレートに続けてガードの上から右フックを叩き込むと、ナルバエスは尻もちをついて生涯初のダウン。さらに連打からの左フックが頭上をかすめると2度目のダウンだ。

 2回に入り、さらに攻勢を強めた。カウンターの左フックを顔面に打ち込み膝をつかせると「ガードが高いので腹が空くのは研究していた」と左ボディーをめり込ませた。わずか6分間で4度のダウン。伝説の王者は立ち上がれなかった。

 これほどの圧勝劇は井上自身も予想していなかった。「夢じゃないですかね。早期決着は全然考えていなかった」。興奮の収まらない大橋秀行会長は「すげえよ。とどめのボディーで伝説の王者の心をへし折った。全世界がビックリする結果だよ」とまくし立てた。

 当初はフライ級の世界王者と対戦交渉を進めた。その過程で浮上したのが、12年間王座に君臨するスーパーフライ級のナルバエス。大橋会長は「まさか対戦するなんて頭になかった」と一度は断った。2階級制覇を狙うだけなら戦うべき相手ではない。だが、プロ転向時「強い相手としか戦わない」と約束した男は、意思確認のメールをもらうと「やらせてください」と直訴した。

 ライトフライ級時代は「減量の最後はヘロヘロ。筋肉までそぎ落としていた」。2階級(3・2キロ)上げたことで減量苦から解放され、試合直前まで追い込むことができた。リング上では「体重の乗ったパンチが打てた」と技術を見せる前にパワーだけで圧倒した。

 国内最速6戦目で世界王座を獲得した21歳は、今度は世界最速の8戦目で2階級制覇達成。今後は軽量級最強と言われるローマン・ゴンサレス(ニカラグア)との無敗対決、13度防衛の具志堅用高の日本記録更新と夢は膨らむばかりだ。「どんな相手の挑戦も受けます。ワクワクする試合がしたい」。日本の怪物から世界の怪物となった井上の伝説は、ここから始まる。

 ◆井上 尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川県座間市生まれの21歳。6歳の時、アマボクサーだった父・真吾さん(43)の指導で始める。新磯高(現相模原青陵高)時代に高校タイトル5冠、全日本選手権優勝、インドネシア大統領杯優勝で計7冠。ロンドン五輪出場を逃し、12年10月にプロデビュー。13年8月に日本ライトフライ級王座獲得。今年4月に日本人最速6戦目でWBC世界同級王座獲得。身長1メートル63、リーチ1メートル70。右ボクサーファイター。家族は両親と姉、プロボクサーの弟・拓真(19)。

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2014年12月31日のニュース