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一翔も負けた…井岡一族“悲願”の3階級制覇ならず「悔しい」

[ 2014年5月8日 05:30 ]

アムナの左フックを浴びる井岡

IBF世界フライ級タイトルマッチ12回戦 ○王者アムナト・ルエンロン 判定 井岡一翔●

(5月7日 大阪・ボディメーカーコロシアム)
 井岡一族の悲願はならなかった。元世界ミニマム、ライトフライ級王者の井岡一翔(25=井岡)はIBFフライ級王者アムナト・ルエンロン(34=タイ)に1―2の判定負け。プロ15戦目で初黒星を喫し、叔父の元2階級王者・井岡弘樹氏(45)が果たせなかった夢には届かなかったが、再起を誓った。IBFミニマム級王者・高山勝成(30=仲里)は小野心(31=ワタナベ)に判定勝ちして2度目の防衛に成功した。

 王者の初防衛を伝えるアナウンスが響くと、満員の場内は静まり返った。父・一法会長に背中を叩かれ、井岡は潔くプロ初黒星を受け入れた。敗者と思えないほど顔はきれいなまま。「ありがとうございました」。観客に頭を下げてリングを降りると時折笑みさえ見せて花道を引き揚げた。

 「2ポイント勝ったかなと思ったけど。自分自身全力を出せた。こういう(判定が)割れる試合をものにできず悔しい。応援してくれた方をがっかりさせて申し訳ない」

 序盤からプレッシャーをかけ続けた。王者のスタミナを奪い、中盤以降には上半身を浮き上がらせてロープに追い込んだ。クリンチ多用の王者には10回に「ホールド」で減点1。優勢に進めた感触はあった。だが、ジャッジの支持を得られず、まさかの初黒星。減点を除けばフルマークという判定もあった。「自分ではブロックで防いだつもりだったけど、ブロックの上からでもポイントを取られたのかな」。それでも恨みがましい言葉は意地でも吐かなかった。

 3階級制覇は悲願だった。物心ついた頃に叔父の弘樹氏はこの壁に阻まれて苦闘の連続。「負けるはずがない」と信じたヒーローの敗戦にショックを受けた。父の猛反対を押し切り、中学からボクシングを始め、高校6冠など実績を残してプロ転向。デビュー前から「世界王者になりたいし、絶対になります。最終目標は3階級制覇」と公言した。

 デビューから約5年、ミニマム級で世界王座初獲得から約3年という異例のスピードでたどり着いた晴れ舞台。そこで立ちはだかったのが王者アムナトだ。アマ時代の08年に国際大会で苦杯を喫した難敵にまた屈した。

 「負けて学んだこともあるのに同じことを繰り返した。いろんな感情があふれてくると思う。次に向けて切り替えたい」

 井岡一族の悲願で「1つの大きな区切り」と捉えた大一番。勝利は逃したが、闘志はなえない。

 「こんなところで終わるつもりはない。これを糧に必ず3階級制覇を達成する日が来る。その日を信じて頑張ります」

 東農大時代に目指した08年北京五輪は前年の全日本選手権決勝で敗れ、かなわなかった。「あの悔しさを忘れるな」。父が一翔に活を入れる際、今でも使う言葉。この敗戦も、大きな飛躍を遂げるための踏み台にする。

 ▼井岡一法会長 判定が出た以上、仕方がない。2ポイント差で勝ちだと思った。(判定が)気に入らんところもあるけど。もう一回頑張ります。

 ◆井岡 一翔(いおか・かずと)1989年(平元)3月24日、堺市出身の25歳。中学からボクシングを始めて興国高で6冠達成。09年4月にプロデビュー。11年2月にWBC世界ミニマム級王者となり、当時国内最速のプロ7戦目で世界王座を獲得。12年6月にWBC、WBA統一戦を制して日本人初の複数団体統一王者となる。同年12月にWBAライトフライ級王者となり2階級制覇を達成。1メートル65。右ボクサーファイター。

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