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井上、一家でつかんだ世界王座…トレーナー父が6畳間改造で特訓

[ 2014年4月7日 10:43 ]

世界チャンピオンとなり笑顔の井上ファミリー。(左から)姉・晴香さん、弟・拓真、井上尚弥、父・真吾さん、母・美穂さん

プロボクシング WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ12回戦 井上尚弥 TKO6回2分54秒 王者アドリアン・エルナンデス

(4月6日 東京・大田区総合体育館)
 家族で手に入れたベルトだ。トレーナーの父・真吾さん(42)は眼鏡の奥の目を真っ赤にして「感無量です。コツコツやってきたかいがありました。頼もしい息子を持ちました」と感慨に浸った。

 社会人になってボクシングを始めた元アマ選手(2戦2勝)の父の姿を見て、小1の井上は「ボクシングをやりたい」と言った。真吾さんは座間市の自宅の離れの6畳間を改造して、練習スペースをつくった。塗装業を営む傍ら、2歳下の弟・拓真とともに常に3人で練習してきた。小さい頃ひたすら課したのはステップの練習だ。「ボクシングは1発(をもらうの)が怖い」。親心として息子が倒される姿は見たくない。「打たせず、打つ」現在のスタイルの礎を築いた。井上は泣きながら練習することもあったが、一度も「やめたい」と言うことはなかった。

 井上が高校に入る頃には秦野市にアマチュアのジムも設立。キッズ時代から全国に知られる存在となった井上は高校1年の総体でいきなり優勝し、日本代表にも名を連ねた。真吾さんは海外遠征にも同行しサポートした。プロとなってからはトレーナー業に専念。普段は料理をしないが、減量食も作る。ニンニクや貝柱を使ったスタミナ満点の特製サムゲタン「シンゲタン」は井上のパワーの源になっている。

 母・美穂さん(42)はアマ時代から全試合をビデオで撮影し、支え続けた。この日はリングサイドで見守り、「涙がちょちょ切れましたね」と喜んだ。井上家は試合と練習に追われ、家族で旅行に行く時間もなかった。井上は世界王座獲得について「自分のためでもあるけれど、家族のためでもある」と言った。家族みんなの夢を実現させた今、真吾さんは「一度、みんなで旅行に行きたいですね」とホッと息をついた。

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2014年4月7日のニュース