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内山悔しいV5…3回負傷ドローに「ガッカリしただろ」

[ 2012年7月17日 06:00 ]

3回、前のラウンドに続きファレナス(手前)の頭が内山の右目尻を直撃。激しく出血し試合はストップ

WBA世界スーパーフェザー級タイトルマッチ12回戦 王者・内山高志 3回1分15秒負傷引き分け 同級6位マイケル・ファレナス

(7月16日 埼玉・ウイングハット春日部)
 不完全燃焼のリング上。止血のため額にタオルを巻いた内山は超満員の観客に「こんな試合をしてすみません」と何度も謝った。リングサイドでテレビ解説を務めたWBC世界スーパーフェザー級王者・粟生隆寛(28=帝拳)にはこう言った。「ガッカリしただろ」。

 KO防衛なら元WBA世界ライトフライ級王者・具志堅用高氏(57)が持つ世界戦6連続KOの日本記録に並ぶ大一番は3回、偶然のバッティングによる負傷引き分けに終わった。5度目の防衛は悔しい結末。試合後に統一戦実施を直訴するプランを温めていた粟生は「そんなことないです。いい動きが見られました」と気遣った。

 地元・春日部で初の試合に「気負いはあったかも」と認める。日本記録の13度防衛を果たした具志堅氏は地元・沖縄でベルトを失った。同じように凱旋試合の魔物に取りつかれた。開始から挑戦者の速い左を被弾。2回にバッティングで古傷の右目上をカット。自分より身長で7・3センチ劣る相手の頭をまともに受けた。3回、ボディーアッパーを狙った瞬間、相手の頭が再び同じ箇所に激突。深さ約3ミリ、幅4センチの傷口から大量の鮮血がこぼれ落ちた。医師が続行不可能と判断し、レフェリーが試合を止めた。

 「何のために練習をしてきたのか、7カ月も。やってきたことが全てパーになった」。この試合に備えて初めてウエートトレを導入して、背中と下半身を鍛えた。減量に苦しんでいる中であえて浴室にグルメマップを持ち込んだ。食べることのできない料理の写真を眺めながら欲求を強引に閉じ込めた。心身ともに徹底的に追い込んだ。ちょうど7年前の05年7月16日にプロデビュー。勝利だけを積み上げてきたレコードに初めてドローが加わる。「やっぱり、ちょっと嫌だな」と顔をゆがめた。

 「(ラウンドが少ないので)試合した感覚になっていない。傷が治ればすぐに練習を始めて、次の試合に向けてのし上がっていきたい」。年内開催が義務付けられる指名挑戦者との次回防衛戦をクリアすれば、来春にも粟生との統一戦が実現する見込み。フラストレーションが今後の内山の大きな原動力となる。

 ▼元WBA世界ライトフライ級王者・具志堅用高氏(自分も地元・沖縄で負けた経験から)地元の雰囲気でみんなおかしくなるんですよ。自分ではいいコンディションのつもりでも、地元だから、KOで勝ちたいとか、いい試合をしたいと思うことでいつもと違う状況が起こってしまう。

 ◆内山 高志(うちやま・たかし)1979年(昭54)11月10日、埼玉県春日部市生まれの32歳。埼玉・花咲徳栄高でボクシングを始め、拓大4年から全日本選手権ライト級3連覇、社会人で国体を制しアマ4冠に輝く。日本代表として04年アテネ五輪アジア予選に出場も3回戦敗退。アマ戦績は91勝(59KO・RSC)22敗。05年7月プロデビュー。07年9月に東洋太平洋スーパーフェザー級王座を獲得し5度防衛し返上。10年1月サルガド(メキシコ)を12回TKOで破ってWBA世界スーパーフェザー級王者となる。1メートル72の右ボクサーファイター。

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