粟生、判定圧勝で誕生日V3!両親に、亡き祖父に感謝
WBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチ12回戦 粟生隆寛 判定 ターサク・ゴーキャットジム
(4月6日 東京国際フォーラム・ホールA)
WBCのダブル世界戦が行われ、スーパーフェザー級の粟生(28=帝拳)は、指名挑戦者のターサク・ゴーキャットジム(30=タイ)に序盤はリードを許したが、中盤からボディーでペースを奪回。3―0で判定勝ちし、3度目の防衛に成功した。
勝利の味は格別だが、それが28歳の誕生日と重なっただけに、なおさらだった。最大8点差の3―0判定。「誕生日に勝てていい経験になりました。お父さん、お母さん、産んでくれてありがとう。心配かけると思うけど、もうちょっと見守ってください」。粟生は、リングサイドの父・広幸さん(52)、母・ゆり子さん(50)に感謝の言葉を贈った。
自身初の指名試合。「最強の挑戦者だからこそ倒したかった」と積極的に出た。2回に右で相手の左目上を切り裂き、4回に右カウンターでぐらつかせた。6回は相手の強打を食らったが、7回にすぐさま反撃。11回にも右フックを利かせるなど、最後までKOする姿勢をみせた。
昨年11月の2度目の防衛戦は8位のボスキエロに苦戦した。原因は安易な水分制限に頼った減量だった。リングに上がると金縛りになったかのように体が反応しなかった。「どこかでなめていた」。苦悩する王者の左側頭部には、それまでなかった白髪が約1センチ四方に密集して生えていた。
悪夢を払しょくするため気持ちを入れ替えた。初めてジムの日程表に「3月6日=65キロ」などと減量目標を書き込み、エアロバイクも導入。摂取カロリーや栄養バランスにも注意を払った。前日計量からは後援会会長が理事長を務める亀田総合病院(千葉県鴨川市)の大橋正樹医師が合流。ゴング直前まで体調管理を徹底した。陣営任せだった相手の研究も自ら行い「ビデオを見たおかげで相手のパンチの軌道もよく見えた」。それらが結果となって表れた。
自分への誕生日プレゼントは時計用のベルト。厳しい練習を耐え抜くモチベーションにしようと100万円相当のものをお気に入りの「クロムハーツ」でオーダーした。「誕生日でこんなに顔が腫れることはない。一生忘れられない」と笑った。今年1月21日には祖父・武さん(享年82)が脳梗塞で亡くなったが、子供のころからかわいがってくれた天国の祖父にも勝利を届けた。だが、満足ばかりではない。「僕はこんなもんじゃない」。KOを逃した王者はさらなる成長を誓った。
◆粟生 隆寛(あおう・たかひろ)1984年(昭59)4月6日、千葉県市原市生まれの28歳。父・広幸さんの影響で3歳からボクシングを始める。習志野高時代に史上初の高校6冠(選抜大会、高校総体、国体を連覇)を達成した。アマ通算76勝27KO・RSC3敗。03年9月プロデビュー。09年3月にWBC世界フェザー級王座を獲得。10年11月にWBC世界スーパーフェザー級王座を獲得。1メートル69.5、左ボクサーファイター。独身。
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