山本浩二監督「我が道」特別版

第15回 プロ野球 前代未聞!警備不安による中止

[ 2013年2月14日 06:00 ]

75年9月10日、中日戦でファンも巻き込んだ大乱闘に発展

 8月7日から首位をキープしながら阪神と中日が目まぐるしく入れ替わる2位との差は一向に開かない。じりじりした展開で迎えた9月10日の中日戦(広島)。2―5で迎えた9回だった。

 好投を続けてきたセン(星野仙一)から2点を返し、なお2死二塁。私は抑えの鈴木孝政からセンター前にヒットを放った。

 ところが、同点のホームを狙った二塁走者の三村敏之はロナルド・ローンの好返球でホームの3メートル前で憤死。新宅洋志(しんたく・ひろし)さんのタッチが顔に入ったことからとんでもない騒動に発展した。

 怒った三村が新宅さんに詰め寄ると数十人のファンがグラウンドに乱入。両軍の乱闘というよりファンと中日の選手のケンカになった。額から血を流している人もいる。異様な光景だった。

 「やめてくれえ!」

 私たちは必死にファンを止め、中日の選手を三塁ベンチからロッカールームに逃がした。だが、ファンは正面入り口を包囲。機動隊が呼ばれ、中日のバスが球場を離れたのは試合終了から1時間以上たった午後11時すぎだった。

 翌11日に予定されたこのカード最終戦はカープ球団が「警備に自信が持てない」と申し出て中止となった。雨でも交通機関のストでもない。警備上の不安という前代未聞の中止である。

 カープは騒動が起きた10日の中日戦に敗れて2位に転落したが、14日に首位へ返り咲くと二度と落ちることはなかった。

 10月10日のヤクルト戦(広島)は私の30号2ランで先制し、外木場(そとこば)義郎さんが2安打完封。4試合を残してマジック3が点灯した。

 どうしても129試合目までに決めたかった。18日の最終戦、130試合目は中日戦。警備不安で中止になった試合だ。ここまで優勝決定がもつれたら何が起きるかわからない。

 11日のヤクルト戦(同)は1―1の延長10回、1死満塁から大下剛史さんの二ゴロが敵失を誘ってサヨナラ勝ちした。マジック2。13日のヤクルト戦(同)は3回に大下さんの中前タイムリーで奪った1点を池谷公二郎―金城(かねしろ)基泰のリレーで守り切った。1―0。いよいよマジック1だ。

 金城は前の年に20勝を挙げながらオフ、交通事故に遭い、視力が著しく低下。半年間入院して夏場に復帰し、抑え役として好投を続けていた。

 試合がなかった14日、東京へ移動する機内でマジック対象の中日と巨人の試合(中日)の途中経過がアナウンスされた。「3回を終わって中日が1―0でリードしています」。結局、中日が6―4で勝った。

 自力で決めるしかない。球団創設26年目にして初の優勝まであと1勝。15日の巨人戦(後楽園)。グラウンドに出てびっくりした。敵地のスタンドが真っ赤に染まっている。武者震いがした。

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