球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

マイノリティー採用はね返す「大リーグ野球村」

[ 2016年11月27日 05:30 ]

 ロブ・マンフレッド・コミッショナー体制になり間もなく2年、この間メディアから「改革が進んでいない」と批判され続けた課題がある。フロントと現場の上級職へのマイノリティー(社会的に弱い立場の人、女性も含む)の採用だ。前コミッショナー、バド・セリグ氏が進めてきた改革だ。今季の黒人監督はナショナルズとドジャースの2人。このオフ、監督交代の4球団でマイノリティーを採用したのはホワイトソックスが中南米系のベンチコーチ、リック・レンテリア氏を昇格させただけ。GM(管理育成部門トップ)では4球団がマイノリティーだが新GM探しの2球団は共に他球団の白人幹部から採用してしまった。

 大リーグ機構(MLB)が手をこまねいていたわけではない。企業の幹部職を探すコンサルタント会社と契約して人材を集め、球団に推薦するシステムを目指した。しかし、効果は全くなし。USAトゥデー紙に「MLBは会社との契約を打ち切った」とすっぱ抜かれた。他のプロスポーツ業界の依頼には手腕を発揮した会社も歴史と伝統を誇る「大リーグ野球村」の厚い壁にはね返された。外部からの新規人材を嫌い、「村」の中の人間関係で球団相互の人事を調整するのである。

 セリグ氏はオーナー出身のコミッショナーで、球団に「フロント、現場を問わず幹部職の採用時には必ずマイノリティーの候補者を含めること」と圧力をかけ、効果を上げた。これは「セリグ・ルール」として今も生きているはず。しかし、MLB理事出身の現コミッショナーでは圧力不足なのか。見せかけでマイノリティー候補者を含めるだけの骨抜きだ。MLBは「球界全体で幹部職の多様性に取り組む」というが、説得力に乏しい。  (野次馬)

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