球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

マイアミ市と野球を結んだフェルナンデス投手

[ 2016年10月2日 05:30 ]

 マーリンズのホセ・フェルナンデス投手(24)が高速ボートで岩礁に衝突する事故で亡くなった。4日後の29日、マイアミの教会で葬儀が行われた。参列したロブ・マンフレッド・コミッショナーは言った。「彼はマイアミ市と野球を結ぶかけがえのない存在だった」。

 マイアミ市は市民の34%がキューバ革命後、自由を求めて亡命してきた人たちだ。フェルナンデス投手はボートでキューバ脱出に4度挑戦して成功した。海に落ちた母親を助ける危険な航海、まだ15歳だった。3度の失敗では、刑務所に入れられた。ドラフトを経て地元チームに入り、野球小僧そのままの熱投で新人王(13年)、エースと階段を上った。フェルナンデス投手は、同じ苦難の経験を持つキューバ系の人たちにとって「アメリカン・ドリーム」の体現者、誇りだった。登板試合はチームの平均観客数の30%増の観客を集めた。

 対照的にオーナーのジェフリー・ロリア氏の人気は最低。過去2度のワールド・シリーズ制覇では、すぐに主力選手を放出するあざとい経営でファンを怒らせた。ところがフェルナンデス投手が新人王になると「常に優勝争いするチームをつくる」と言いだした。生え抜きのジアンカルロ・スタントン外野手と13年300億円超、クリスチャン・イエリチ外野手と7年50億円で契約した。今季で大リーグ実績3年、年俸3億円のフェルナンデス投手にも大型契約を用意していたといわれる。

 オーナーの経営方針を変えさせたカリスマ性を持つ投手の早すぎた死。ロリア氏は背番号16を永久欠番とし、「彼は伝説になってしまった」と涙した。今季16勝8敗、防御率2・86。野球記者の間でナ・リーグのサイ・ヤング賞との声が高い。 (野次馬)

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