球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

引退ではない…Aロッドは解雇されたのだ

[ 2016年8月14日 05:30 ]

三塁ベース付近の土を拾うヤンキースのアレックス・ロドリゲス(AP)
Photo By AP

 ヤンキースがロドリゲスのユニホームを脱がせた。「引退」とされるが、実際は解雇だ。今季残り年俸と来季年俸の総額約30億円を払うのだから。ハル・スタインブレナー・オーナーとロドリゲスは8月に入って3度面談した。「もう君は使わない」。ロドリゲスは、大リーグ機構(MLB)、大リーグ選手会、ヤ軍を相手に「私を薬物汚染選手に仕立てた」との訴訟を起こした選手だ。結局、ロドリゲスは自分のウソを告白して訴訟を取り下げ、出場停止1年。そんな選手に特別アドバイザーの職と「引退式」で報いたのは、双方が互いのメンツを守る妥協の産物でもあった。今後ロドリゲスは自由にどの球団とも契約可能だ。

 7日の「引退会見」の後、解雇を4試合待ったのはホームゲームでのセレモニーのため。ロドリゲスは4試合を「特別試合」と受け取った。ジョー・ジラルディ監督が「4試合先発で使う」と発言したせいもある。だが、ボストンでのレッドソックス3連戦で先発は1試合だけ。「ショックだ。ひどい」とロドリゲスが騒いだ。

 指揮官は記者たちに「言ったことを変えたのを謝る。私は監督の仕事に忠実でいたい。勝つための先発を選ぶのがその第一歩。引退ツアーの添乗員ではない」。ロドリゲスは「レイズ戦はDHでなく三塁先発を」と訴えたが、答えは「ノー」。9回に守らせたのが最後の妥協だった。

 ニューヨーク・タイムズ紙は社説「イチローの栄光とAロッドの終わり」で、引退会見と同じ日にイチローが3000安打を達成したのを指摘し、「ともにマリナーズでデビューし、大スターになったのに、この落差」と論じた。ニューヨーク・ポスト紙は雷雨の引退式に「神もAロッドを憎んだ」と書いた。

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