球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

本塁打数年間5600本超えのペース 増加の訳は単純な力勝負の結果

[ 2016年7月17日 05:30 ]

 今季、本塁打の数が増えている。前半戦の1試合平均は1・16本、このペースが後半戦も続くと年間5600本を超える。これまでの最高はステロイド全盛期の00年に記録した5683本。球宴恒例の野球記者会との会見でロブ・マンフレッド・コミッショナーは「不正薬物使用による増加ではない。大リーグ機構(MLB)の薬物検査は年に2万2000回。厳しい監視が続いている」と言った。「日本ではボール変更事件でコミッショナーが辞任したが、MLBはボールを変えていない」と余計な言及までした。本塁打増加の原因をニューヨーク・タイムズ紙が伝えた。

 カブスの左腕レスターは「打者の投手に対するアプローチが変わった」と指摘。打者に「ボールを打ち上げろ」と指導する打撃コーチが増えた。変形シフトで、ゴロの打球で内野手の間を抜くのが難しくなったためだ。打球に占めるフライの割合は30%超程度でこの15年間一定しているが、それでも本塁打が増えたのは「速球で打者を抑えようとする投手が多くなったからでは」とオリオールズの捕手ウィータース。「今の投手のテーマは“98~99マイル(約158~159キロ)を投げられるか”。ストライクゾーンの四隅を使い、変化球で打ち取る技がおろそかになった」。今季は審判が低めをとらないので捕手は高めの速球を要求する。変化球も速球系のカッターやスライダー全盛で鋭く落ちなければ平凡な速球で長打になる。打者と投手の対決が単純な力勝負になり「本塁打も増えたが三振も増えた」とレスター。球宴の舞台裏で交わされた本塁打増加の「原因」はこんなところ。納得できる説だが、後半戦、本塁打ペースはどうなるか。 (野次馬)

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