球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

安全確保か臨場感か…防護ネットにファン賛否

[ 2016年6月26日 05:30 ]

 今季、大リーグ機構(MLB)は全球団に「観客の安全確保」を要望した。ファウルボールや折れたバットで観客が負傷する事故が多発する。入場券に書かれた「飛んでくるものに注意を。事故は観客の自己責任です」の球団免責条項だけで済ませられなくなった。MLBは「内野席に防護ネットを」とガイドラインを示すが、球団の反応は鈍い。そんな中でツインズが動いた。築7年目のターゲット・フィールドの内野席前に日本の球場のようにネットを張ったのだ。

 ファウルラインから内野席1列目までの距離14メートルは大リーグ球場で最短。「ファンと選手が交流しやすい雰囲気を、というのが新球場のコンセプト」とツ軍の球場運営部長。「同時にその方針と観客の安全確保のバランスで悩んでいた」。だが、ジム・ポーラッド・オーナーの決断が早かった。「観客安全第一に」。“危険区域”は一塁側、三塁側の最も高額なシーズンシート14列。球団では契約者全員に太さ1・2ミリのファイバー製のネットを取り付ける計画を伝え、希望者には席の変更に応じる、と説明した。移動希望者は6人。「最初はネットが気になったがすぐ慣れた」、「安心してスマホが使える」と好評だった。

 ネット設置費用は1000万円程度、球団には大した負担ではない。問題はファンの野球文化だ。ホラー小説の巨匠スティーブン・キング氏は「ネットは、現場にいる、喜びの感覚を奪う。視線を邪魔しないネットでも障害物を通して見ることに変わりはない。テレビで見る方がまし」と言う。ライナーに素手を伸ばすファンが多いのもこの現場を楽しむ文化ゆえだ。全球場が安全確保の足並みをそろえるのは容易ではない。(野次馬)

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