球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

お金だけではダメ…メッツ新オーナーがクリアすべき“審査”

[ 2020年10月25日 02:30 ]

 新型コロナウイルス感染拡大で異例ずくめのシーズンも大詰めだ。無観客で開催した60試合のレギュラーシーズン。30球団全体の損失は30億ドル(約3150億円)に達した。

 そんな球界に大金を呼び込む明るいニュースが9月にメッツが発表した「新オーナー、スティーブ・コーエン氏」だ。ヘッジファンド投資で大富豪となった少年時代からのメッツファン。球団強化の巨額投資は間違いないとファン、代理人たちの夢も膨らんだ。

 だが、ここに来て新たなハードル。新オーナーはメッツのホーム球場が立つ市有地使用でニューヨーク市と借用契約を結ぶ。メッツは市と99年の借地契約を結んでいるが、引き継ぐ新オーナーが「市の財産を使用するにふさわしい人物かの審査に合格しなければならない」(市長室広報)。

 影を落とすのはコーエン氏が投資家時代に起こしたインサイダー取引。コーエン氏は罰金18億ドル(約1890億円)を払い罪を免れたが、部下は禁錮9年に処せられた。ビル・デブラシオ市長はメッツ売却賛成派だが、買い手では女優のジェニファー・ロペス、アレックス・ロドリゲス氏のグループを支持していた。市長の判断はどう出るか。

 そして、さらに29球団のオーナー会議で23球団以上の賛成票を集める必要がある。今は野球もギャンブルの対象だが、かつては競馬場所有でノーとなった買収者もいた。アストロズのジム・クレーン・オーナーは運送業経営者だが、社員を注意するのに怒鳴ったことが問題にされた。

 11年にようやく新オーナーになると、チームはナ・リーグからア・リーグに所属を替え「球界内政治は難しい」と聞かされたことがある。お金だけではオーナーになれないのだ。 (野次馬)

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