球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

熱狂的ヤンキースファンの博士が掲げる妥協なき開幕条件

[ 2020年5月10日 05:30 ]

 大リーグは、6月にキャンプインし、7月上旬の開幕を目指す。新型コロナウイルス(CV)感染拡大で3月の開幕を断念し、伝統と歴史無視の開幕案が浮かんでは消えた。今度はどうか、鍵を握る人物の見解は?トランプ政権のCV対策特別チームのアンソニー・ファウチ博士(79)。国立アレルギー感染症研究所所長で6人の大統領を補佐した感染症研究50年の大家だ。

 1月、CV対策チームが発足した際、大統領が「このウイルスは怖くない。風邪同様すぐ抑えられる」というと、ファウチ博士は「甘く見てはダメです。厄介な闘いになります」とズバリ。以来、博士は大統領の暴言、暴走に「医学的見地からの事実」を伝え続けた。何度か流れた解任の噂は人々の支持の声で消された。

 白髪、痩身(そうしん)、メガネをかけた小柄で物静かな人物だが、注目したのは博士が「野球のスローなテンポと突然のアクション、それが好きだ」と言う古典派ファンのため。生まれも育ちもニューヨーク。少年時代はヤンキース黄金時代で12年間に8回王者となり、ヤ軍の熱狂的ファンになった。

 開幕条件は以前とぶれていない。「選手とファンの安全が全て。マスクをし、機会あるごとに手を洗い、人との距離は3メートル以上を保つ。これを続け感染者を減らす。無観客試合でも同じこと。球団関係者、球場関係者、ホテルの人たち全てを選手と同様に。移動の乗り物、宿舎、クラブハウスも徹底消毒。そして毎日、感染の有無を調べる検査。これができないなら、今シーズンはないだろう」。医学者として妥協はない。

 政治家は「選択の技術者」だ。防疫で経済活動制限か、経済破綻回避の開放策か、世界中の指導者が難しい選択に悩んでいる。 (野次馬)

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