球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

コロナがもたらす面倒な労使対立

[ 2020年5月3日 06:15 ]

 大リーグ機構(MLB)は新型コロナウイルス感染拡大で当初の開幕日だった3月26日を後退させ続け、今は7月初旬開幕、「せめて100試合を無観客でも…」と熱望する。

 「ならば急いで決めておくことがある」とニューヨーク・タイムズ紙。開幕がキャンセルになった3月26日夜、オーナー(球団)側と選手会は最低でも81試合実施で合意した。そして、選手側に年俸の4、5月分として総額1億7000万ドル(約182億円)を先払い。これはシーズン中止でも返す必要はないが、今季年俸は試合数比例で支払われる。昨季各球団が選手に支払った年俸総額は約39億ドル(約4173億円)。年俸減は必至で選手が球団側に譲ったように見えるが、球団側は出場登録日数で得る選手のFA資格、年俸調停権等の諸権利をシーズン中止でも「フルシーズン」と全て認めるとした取引だ。

 どちらが損か得かは難しいが、オーナー側は「無観客試合になったら選手の年俸をカットできる」と考えているというのだ。メッツの最高執行責任者ジェフ・ウイルポン氏がニュース専門局CNNのキャスターに漏らした。キャスターはニューヨーク州知事アンドルー・クオモ氏の弟。知事は弟の話をウイルス感染症定例会見の“彩り”でしゃべった。

 オーナー側の言い分は、「入場料収入、駐車場収入、売店収入、観客入場に伴う他の収入もゼロ。期待できるのはテレビ放映権料だけ。国の非常時、球団の大幅収入減の痛みを選手も共にすべきではないか」。もちろん選手側はノー。「選手が年俸カットをのまなければ球団は無観客試合をやらないだろう。面倒な戦いになる」と選手会幹部。新型コロナウイルス感染症の副作用の労働争議発生だ。(野次馬)

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