球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

名選手アル・ケーライン氏の追悼記はコロナ禍に吹き抜けた爽やかな風

[ 2020年4月19日 05:30 ]

 レギュラーシーズン開幕日が決まらない。「開幕は、選手、ファンの健康の安全が確保されてからだ」と大リーグ機構(MLB)のロブ・マンフレッド・コミッショナー。そこで連日30球団本拠地都市のコロナウイルス感染者と死者数をネットで眺めている。

 数字は悪くなるばかり。開幕は遠い…と思うところに先週、アル・ケーライン氏(享年85)の死去の報。日米野球でタイガースが来日した62年、高校を休み、東京スタジアムと後楽園球場で観戦し、ケーラインに魅せられた。凡打の全力疾走がかっこよかった。

 マイナーを経ず18歳でタイガースに入団、19歳で正右翼手、20歳で史上最も若い首位打者に。強肩好守、タイガース一筋22年、もちろん米国野球殿堂入り。ニューヨーク・タイムズ紙OB記者の追悼記がよかった。以下、要約で紹介する。

 ――69年夏、私は試合前のタイガースベンチでケーラインに、現役17年目、34歳になるのにオールスターレベルのプレーを続けられる秘訣(ひけつ)を尋ねた。その答えに驚いた。

 「時々、おまえは一体何をやっているんだ、と考える。もっと世の中のためになることをやるべきだった、と。例えば医者だ。しかし、十分な教育が受けられなかった。子供の時から大リーガーになるぞ、だけだ。そのことに気づく前に大リーガーになっていた。そしてベンチに座ると、素晴らしい場所だと思い、自分の打率、守備率を気にし、チームのことも思う。だが、結局は自分のことに戻る」

 「望みはファンたちが、私の引退後、“本当にいい外野手だった”と言ってくれることだ」

 陰気な報道が多い中、誠実な人柄を伝える風が吹いた。余談を一つ。長嶋茂雄さん(現巨人終身名誉監督)が天覧試合で本塁打したバットがルイビル・スラッガーのアル・ケーライン・モデルだった。(野次馬)

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