球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

泥沼サイン盗み騒動の中で…キラリと光るダルの「ゴミ缶」

[ 2020年2月23日 05:30 ]

 17年ワールドシリーズ(WS)勝利のアストロズのサイン盗みでロブ・マンフレッド・コミッショナーが下した処分に、ファンと選手の怒りが殺到している。普通、大リーグ機構(MLB)の処分対象選手に他球団の選手は批判を浴びせない。仲間意識のためだ。ところが各チームのトップ選手が「野球を汚すルール違反選手の放任とは」と発言し、止まらない。

 慌てたコミッショナーは「ア軍選手は調査に協力した。彼らは面目を失い、謝罪し、連日厳しい質問にさらされた。それで十分」と騒動の火消し会見。さらに、「ア軍選手の協力なしには事件の全容はつかめなかった。完全な世界なら罰を科せるが、我々の複雑な世界ではそうはいかない。協力者には恩赦が必要…」と、まるで違反選手の弁護士か選手会の専務理事の脱線発言。実は調査開始にあたってコミッショナーは選手会トニー・クラーク専務理事に「選手は罰さない」と約束して協力要請をした。結果がGMと監督の1年職務停止での球団からの解任だ。この選手処分なしが、選手会に亀裂を生んだ。

 ア軍のダスティ・ベーカー監督はさすがベテラン、「他球団に我がチームの選手に報復行為をしないよう注意勧告を」とMLBに申し入れ、実行させた。「17年WS勝利チームを剥奪し、トロフィーは返還」の声も強い。それが不可能との会見でコミッショナーが自分の名を刻んだトロフィーを「単なる金属」と失言、謝罪会見…と大混乱だ。

 ニューヨーク・タイムズ紙は選手のベスト発言にダルビッシュの「ゴージャスなゴミ缶だ。オレは好きだ!」を選んだ。球種知らせのゴミ缶叩きと価値のない優勝トロフィーとを重ね、あのWSで2敗の自分の悔しさを込めたセンスを認めたのだ。(野次馬)

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