球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

なおくすぶるサイン盗み事件の火種…

[ 2020年1月19日 09:30 ]

 アストロズのサイン盗み事件を扱った先週のコラムを「泥沼化の様相」と結んだ。ところが“泥沼”どころか急展開だ。コラム掲載2日後にMLBは調査報告を発表した。個人に対する処分は、ジェフ・ルノーGM、A・J・ヒンチ監督の1シーズン職務停止。球団は2人を解任した。報告書にサイン盗みの主導的役割を果たしたと明記された当時ベンチコーチのアレックス・コーラ氏(レッドソックス監督)、外野手兼指名打者のカルロス・ベルトラン氏(メッツ新監督)は、それぞれの球団と話し合い辞任、MLB処分が出る前に身を引いた。後追い処分は「1シーズンの職務停止」になるのだろう。

 形式的には一件落着。しかし、球団間には不満がくすぶっている。MLBは報告書発表に先立って全球団に「批評、感想等は一切言わないように」とかん口令を敷いた。かん口令がすぐ漏れるのだから効き目はないのだが、「サイン盗みを日常的にやっている球団は6、7球団ある」と不満が出たという。また、「ドラフト上位指名権を得るために“勝とうとしない(タンキング)球団”の調査が必要」との声もあった。ルノーGMによるア軍の3年連続100敗から3年育成、そして3年連続100勝のチームづくりは見事だが、100敗時期への違和感だ。

 野球に電子機器を導入したのが今回のスキャンダルを生んだ…という老記者のブログも目に付いた。野球は不完全な人間の目による判定で進行するグレーゾーンの多い競技。電子機器でグレーゾーンをつぶし、正確さ優先でおおらかさを失いギスギスした競技になった、との不満。「ベルトランは自分の目によるサイン盗みの名人。惜しい技術が失われた」と。(野次馬)

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