球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

時間短縮に夢中の大リーグ 野球の魅力はどこへ…

[ 2020年1月5日 08:15 ]

 オリンピックイヤー。野球のメダル争いは1992年バルセロナから08年北京までの5大会。今回の東京は3大会ぶりの復活だが、次回パリ大会では実施しない。野球は五輪と相性が良くないのだ。

 野球が3度目の公開競技を行った1936年ベルリン大会が相性の悪さの象徴だった。大会は“ヒトラーの五輪”として多くのエピソードを生んだが、野球のルールを知らない観客相手の試合の様子を、ニューヨーク・タイムズ紙が紹介した。

 8月12日、五輪スタジアムに11万人の大観衆を集めて7イニングの試合がナイターで行われた。当時大リーグではヤンキースの平均観客1万2687人が最高だから、史上空前の観客だ。芝に幅10センチの白テープでラインを引き、サッカーのゴールポストがバックネット。大観衆は右手を伸ばすナチス式敬礼で選手を迎えたが、練習も試合も区別がつかない。照明塔の光は15メートルの高さまでしか届かない。観客はヒットよりも打ち上げられたボールが照明光の外に出て闇に消え、再びボールが光の中に落ちてくるシーンに喜んだ。米国の特派員は「これまで見た野球で最も奇妙な観衆」と嘆き、観客は「動く選手が少なく、あきれるほど退屈な競技」に3回で数千人の観客が出口に流れ、4回は大群衆の大河になった。

 84年前の“五輪野球報道”に笑ったが、守備側がボールを動かして試合が始まり、試合中も守る側がボールを支配するのが野球だ。「野球をスローで退屈と思う人は、退屈な心の持ち主」との名言があるが、スポーツ=アクションの時代には通じにくい。今の大リーグはアクション野球で試合時間短縮と規則改正に夢中だ。野球よ、どこへ行く…と考え込んでしまった。 (野次馬)

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