球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

役職マイノリティーの“低打率”は分断社会を映す鏡

[ 2019年12月1日 02:30 ]

 このオフ、大リーグ機構(MLB)は大忙しだ。アストロズのサイン盗み調査が進行し、不法薬物使用では、エンゼルスのスカッグス投手の死亡事件で球団関係者の関与が浮上、麻薬捜査局との調査も続く。加えて、続発する家庭内暴力(DV)禁止規則違反…。

 通常業務に加えて騒動への対応に追われるが、「球界の多様性実現に使うべき権力をコミッショナーが使おうとしない」と批判の声がOB記者や人権団体から上がった。球団で決定権を持つ高位役職にマイノリティー(黒人と中南米諸国出身者)の採用が増えないのだ。このオフは8人の監督が交代したが、マイノリティー出身の新任監督はヤンキースGM補佐からメッツ監督に転じたカルロス・ベルトラン氏ただ一人。フロントでは編成担当重役1人、GM2人、球団社長1人が交代し、後任は皆白人男性。「打者に例えれば、12打数1安打。打率8分3厘の落第点」だ。

 高位役職にマイノリティーを…は前コミッショナー、バド・セリグ氏の悲願だった。セリグ氏はミルウォーキーの実業家で、地元球団ブレーブスのホームラン打者ハンク・アーロン氏(黒人)の大ファン。ブ軍がアトランタに移るとブルワーズを創設し、アーロン氏現役最後の2年間をチームに迎え入れた。

 「GM、監督の採用時には面接対象に必ずマイノリティーを含めること」とのガイドラインを定めた。「その指針も今は夢物語」とは殿堂入りOB記者の嘆きのコラム。大リーグは米国を映す鏡。多様性から分断に変わった社会を映したのだろうか。 (野次馬)

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